陰口を言っていた彼女らは誰が何と言おうと悪い。だが、大っぴらに喧嘩をした小学生たちに対しては、程度の差はあれ喧嘩両成敗的な判断を下される場合が多い。この時のように、片方が100%責められるのは稀なケースだ。

 教師は恐らく、莉桜が癇癪を起したことで心臓に負担を掛けたかもしれないとパニックになっていたのだ。一方的に怒られたことで、莉桜は喧嘩相手の女子たちに逆恨みされてさらに睨まれるようになった。


 そしてこの件を境に、莉桜はずいぶんと穏やかになった。自分は敵をつくりやすいと気付いたのだろう。



「体育サボり? ……あは、バレたか。いやー、皆暑くて大変そうな中こうやって合法的に見学できるんだから、この身体も悪くないよね~」



 小学校も高学年になった頃には、同じような悪口を言われても、そう冗談めかして受け流すようになっていた。


 だけど僕は知っている。そういう冗談を言った直後の莉桜は、いつもひどく苦しそうな顔をしているのだと。