そんな雑な解説に、莉桜は「へー、さすが文芸部」と感心したようにうなずいた。

 だがこちらからすれば、全く興味がないにもかかわらず、「梶井基次郎」と聞いてすぐに『檸檬』という作品名とが出てくるあたりさすが秀才だと思う。



「何にせよ科学的根拠はないし、そもそもそれはきっと死体遺棄罪になるだろ。犯罪になるような願いはさすがに聞けない」


「まあそうだよねー。お願いについては期限までにゆっくり考えるよ。佑馬だったら私に何をお願いする?」


「……僕もすぐには思いつかないから、同じくゆっくり考えさせてもらう」



 本当のことを言えば、莉桜への願いなんて一つしかない。だけどそれをこの場で言う勇気は僕になかった。



 莉桜の歩幅に合わせてゆっくりと歩くうちに、ようやく正門が見えてきた。そのすぐそこの道の脇に、見慣れた水色の軽自動車が停まっていた。