僕は軽く頭を振ってそんな思いをかき消す。手術の話を聞いたばかりだからそんな感じがしただけだ。本人はどうせ夕飯のことでも考えているに決まってる。



「莉桜」


「ああ、おかえり」



 僕の呼びかけに振り返った莉桜はにこりと笑みを浮かべる。その瞬間に、既に先ほどの儚さは消え去っていた。



「ぼんやりしてどうした?」


「うーん、今日の夕ご飯は何かなって思って」


「予想を裏切らないな君は……」


「あは、バレてた? ……ああ、でももう一つ考えてたことがあってね」



 出しっぱなしにしていた筆記用具を鞄に詰め込んでいく僕に合わせて、莉桜も「よいしょ」と立ち上がる。

 放課後こうして隣に並んで歩いても、僕と莉桜では見た目からして釣り合わず、きっとカップルなどには見えないのだろう。



「さっき言ってたゲームについてなんだけど」


「うん?」


「負けた方は勝った方のお願いを一つ聞くっていうのどうかな?」