「今日は良い天気だねー」


「そうだな」


「まだ若干肌寒いけど、春はもう目の前って感じ」


「……」



 今まで莉桜とはどんな風に会話をしてただろう。急にわからなくなってしまった。

 ああそうだ。さっきの言葉であればきっと、「目の前っていうか、世間的に見たら三月も春だろ」とか何とか言い返したはずだ。ままならない。

 僕たちの間に流れる微妙な空気は、莉桜も感じているのだろう。ちょっとうつむきながら歩く彼女は、いつもより口数が少ない。



「……明日から入院」



 ぽつりと聞こえた莉桜の声に顔を上げる。



「明日?」


「手術までは一週間あるんだけどねー。体調とか色々調整があるからさ。だから佑馬とゆっくり話すには今日しかないと思ってさ」



 のんびり歩いていた莉桜が、ぴたりと足を止めた。



「到着。本当はもう一週間ぐらい後に来たかったんだけど」



 地図で見た限りでは、何の変哲もない川沿いの道。だけど実際に足を運ぶと、莉桜が行きたがっていた理由がわかった。