ある。あるに決まっている。莉桜と過ごす時間のためなら、たとえ何か別の予定が入っていたって空ける。

 そんな気持ちを素直に返信しそうになって、慌てて入力した文字を消していく。そして代わりに、どこかそっけなく質問で返す。



『特に予定はないけど、おばさんに怒られるんじゃないのか?』



 それに対してはただ「大丈夫」とだけ返ってきた。

 追加で『一緒に行きたい場所』の位置図が送られてくる。地図上で見る限り、丸をつけて示してある場所は単なる川沿いの道だ。なぜそこに行きたがるのか皆目見当がつかなかった。



「佑馬」



 チャイムが鳴った直後。荷物をまとめていた僕に、莉桜はどこかバツが悪そうな笑みを浮かべながら近寄ってきた。

 放課後にこうして会話をするのが妙に懐かしい感じがする。



「もう行ける?」


「ああ」


「よしっ」



 昨日送られた地図で、これから行く場所への道順は一応頭に入っている。だけど莉桜が一歩前を歩こうとするので、それに付いていくことにした。