他の部活ではまずありえないだろうが、高島先輩は12月の末まで部長として文芸部に在籍していた。受験に関しては、三年生の中で誰よりも早く、しかも余裕で推薦を勝ち取っていたから許された所業だろう。

 そんな部活の時間の中で、莉桜が先輩に話しかけに行く姿はちょくちょく見受けられた。趣味が悪いと自覚しつつ聞き耳を立てたことが何度かあるが、どうやら創作のコツを聞き出していたらしかった。

 僕を含め他のメンバーとは、活動時間中であっても創作に関係ない雑談ばかりしていたので、ちょっと意外に思ったものだ。

 最初は創作に全く興味が無いと言っていた莉桜に良い感情を持っていなかった高島先輩だが、今では入部しなかったことを残念に思うぐらいには彼女のことを気に入ったようだ。



「……二年になったら、もしかしたら入部する気になるかもしれません」



 もし莉桜が二年生になれたのなら、それは手術が無事に成功したということ。そうなったら、また入部を勧めてみようと思っている。