それとなくそのことについて触れてみると、「あんまりお母さんを心配させるのも違うかなって思って」という答えが返ってきた。

 莉桜の母親が僕のことを良く思わない旨の発言をしているのだろうことが、何となく察された。

 学校での様子を母親が知ることはないのだから、話すぐらいは構わないのではないか……なんて、負い目のある僕から言えるはずもない。



「ちょっと、門限が厳しくなったみたいで」



 事情を知らない部員たちには、この説明が限界だった。

 高島先輩は、紙コップにジュースを注ぎながら「そうか」と呟く。



「……結局あいつ、俺が卒業するまでに入部届出さなかったんだな」


「先輩、最初は莉桜に『入るな』って言ってたじゃないですか」


「創作に興味のない奴が入ったって、活動にしまりがなくなるからな。だが、あいつはちゃんと興味を持っていたし、才能もあった」