おともだち

 気のせいか、とも思ったが……。

 最近、どうも多江の様子がおかしい。……気がする。
 ()()()は変わらずにある。けど、不意に会社であった時なんか明らかに目が合ったというのに気づかなかったかのように振舞われる。こちらから声をかけようものなら、ビクリと肩をはねさせる。えー……そんな驚く?すぐに目も逸らすし、目をキョロキョロさせ気まずそうにしている。

 最初はちょっと様子が変だな、くらいだったけど確信に変わった。……これ、避けられてないか、と。
 なんかしたっけ、俺。いや、してない。むしろ、()()()のに()()()()。ちょっと近づきすぎか?でもな、セフレなんだから普通の関係より近づいてもいいんじゃないのか。

 顔に何かついてた?
 トイレの鏡の前、確認してみるが別に何もついていない。歯?歯に何かついてる?いーっと歯を出してみたが大丈夫そうだ。
 もしかして、臭い?臭いとか。何、息?体臭?え、マジ?

「……どうしたの、宮沢くん、ガサガサして。背中でもかゆい? 」

 総務の辰巳主任に声をかけられハッとする。

「いえ、あ、えっと。俺、今日臭くないですか? 」
「……ああ、大丈夫だけど。いい匂いだよ」
「そう、ですか。よかった」
「うん。あ、いい匂いとかは、気持ち悪かったかな。今から来客? 」
「あ、大丈……夫、です。俺が頼んだので。そうそう、そうです来客が」

 …………。 

「「…………」」
「…………いや、じゃあ、頑張って」
「はい」

 トイレ前で辰巳主任に匂いを嗅いでもらっているところを女子社員に見られ、変な感じになってしまった。何やってんだ、俺。で、何でこの階にいるんだよ、辰巳主任もよ。