おともだち

 宮沢くんが()()()()帰った後、私は呆然としていた。
 缶のお酒をちゃんとグラスに注ぐだとか、洗い物をして帰るだとか。彼が洗った後の水回りが綺麗だとか。何か本当にイメージ通りなんだけど、それの上を行く高潔さだなぁ。と思わせられた。恋人でも、セフレでも気を使うというか緊張するのは同じなんだな。

 彼は、適当でいいって気軽な関係を築こうとしてくれている。彼が当初提案した恋人とは真逆の関係なのに。私より彼の方が上手く出来ている気がする。

 慣れなのかな。恋人でも、セフレでも。それなら、もっと彼と会って慣れて緊張しないようになればいいのか?
 彼ともっと会うには、私から彼に声を掛けないといけない。恋人と週に1、2回会うのがしんどくてセフレを求めた私がセフレは週に1、2回呼び出すとか、何かすごく性欲が強い人みたいで恥ずかしい。

 いや、矛盾してようと、私の自由にしていいはずだ。そういう関係を望んだのだから。

 会社帰りに一緒に買い物して、手をつないで帰って、一緒にご飯作って、並んで食べて、くっついて色んな話して……。
 これって恋人と何が違うんだろう。

 これから少しづつ関係を進めていく恋人の過程と差が無いように思えた。恋人でも……キス、くらいはしてもよさそうな感じだった。でも、キスはおろか、セフレという関係のど真ん中の目的であるセックスをしなかった。

 セフレって何するんだっけ。いや、セックスだってば。
 
 私は一人思い悩んでいた。スマホで“セフレ 何する”なんて検索してはそのまんまじゃんと一人ごちた。
 宮沢くん、セフレ()に対してもこう丁重に扱ってくれるのならば、逆に恋人に対しての態度はどんなものなのだろうか、もっと甘くて、恋人にだけ見せる一面があるのだろうか。

 私はそんなことが気にかかる。
 “続きは今度”彼の言葉が頭の中で響く。続き……ってどんなことだろう。

 気づけば宮沢くんにメッセージを送っていた。
 『今度はいつ会える? 』