おともだち

「やー、ほんと私がいて良かったよねぇ。おんなじマンションで良かったよねぇ。こういう時ありがたみを感じるよねぇ」

 奈子の大袈裟なアピールに吹き出すも、おおよそその通りで言い返すことはなかった。ピピピと電子音が鳴る。奈子は私から体温計を引き取って熱が下がっているのを確認すると小さく切ったスイカを出してくれた。よく冷えていて美味しい。

「この真夏に風邪ひくー? 」
「いや、私って風邪ひくとき絶対喉からだから、これは風邪じゃないと思う」
「はぁ、疲れてんじゃん、多江。仕事忙しいの? 」
「そうじゃなくて、考え過ぎちゃって、色々……」
「ふん。仕事じゃないとなると、例の好きな人、ね」
「そう」
「そんな思い悩む前に相談してくれたっていいじゃん。どうなったんだろうって心配してたのに」
「ごめん。でも、どうもなってないの、どうも」

 奈子は呆れた目を私に向けた。
「どうもなってないのに熱出るくらい悩んでんのかよ」

 ご指摘がごもっともで言葉に詰まる。はぁ、とため息を吐くとここ最近の出来事を奈子に話した。栄司とは何の進展もないうえに、身体の関係も無い。そして他の子と話していた『復讐』に心折れてることと、大学時代の加賀美くんに再会したことと、加賀美くんの後輩まで栄司に釘付けだった愚痴まで。ただ、奈子を加賀美くんに紹介しようと思っていることは後で話すことにしようと思う。

 奈子はふんふん聞いてたけど、途中でニヤニヤしだした。私はだんだん早口になって、顔が熱くなってくるのを感じた。熱が出るほど悩むことだったのか、私にもわからない。でも、出たんだからしょうがないじゃないの。