おともだち

 食後のコーヒーは彼女と同じタイミングで到着し、店員は俺と彼女のコーヒーを同時に運んできた。また、ハタと目が合った。気まずさについ声をかけた。

「今日は加賀美、一緒じゃないんだね」

 彼女はビクリとした後、アイスコーヒーの入ったグラスを持って俺の前に移動した。

「あの、コーヒーだけ、ご一緒してもいいですか」

 もう移動してるじゃん、とは言えなかった。
 どうしたものかと思ったが彼女の鬼気迫る表情に頷き、席を勧めると、ホッとしたように腰掛けた。

「加賀美さんとは高校の同級生だとお伺いしましたが。あの一緒にいた女性もそうですか」

 いきなりぶっこんでくる様子に若干引いたのが伝わったらしい。彼女はコーヒーを口にしてふうと息を吐いた。

「すみません。もうメンタルがギリギリで。自分でもどうしていいか。でもそうですよね、いきなり怖いですよね。私……」
「まぁ、まぁ、落ち着いて。どうしたんですか」

 今にも泣きだしそうな彼女は自分でわかってるほど『メンタルがギリギリ』なのだろう。めんどくさいことになったとは思うが、放置も出来ないし、どのみちもう昼休憩なんでそう長くはかからない。

「私、加賀美さんが好きで、ずっと片思いしてるんです」
「はぁん」

 思考停止。あと、知らねえよ。あと、ちょっとうぬぼれて恥ずかしいのと。

「ここ最近加賀美さんの仕事を引き継ぐことになって、二人になれる機会が増えて、同行最後の日にご飯誘って、気持ちを伝えるぞって決めてたんです。今日がその最後の日で……」
「ああ、そうなの。頑張って……」
「でも! お昼は別行動になっちゃって。がっかりしてたら、ちょうど夕方から合流できるようになって。ちょうど良くないですか、金曜の夜――なんて」
「あー、うんうん、そうね」

 なんだよ、何聞かされてんだよ。