おともだち

 週末が来て欲しいのか、来てほしくないのか。
 会いたいのに怖くて尻込みしてしまう。

『いつも通り過ごそうか」のいつもどおりがどういう過ごし方か思い出せずにいた。

 ――好きだから、会ってもまたすぐに会いたくなるってこと、気づくのにこんなに時間がかかるなんて。この週末、私は告白するつもりでいた。栄司が受け止めてくれるかわからないけど、後悔しないためにそうしようと思っていた。

 セフレという関係も失うか、それとも新たな関係を築けるのか。上手くいっても不安が残る。私、付き合うことに向いてないって思ったところだから。ぐるぐると答えの出ないことをずっと考えてしまう。私の悪い癖だ。はぁ、頭が痛い。


 この関係を始める時、栄司も『考えすぎるな』って言ってくれたのに。ふーっと息を吐いて仕事に向かった。


「仁科さん、顔赤いけど暑い? 」

 そう辰巳主任に声をかけられ、顔を上げた。

「え、そうですか? 」
「……体調悪いんじゃない、もしかして」
「あ、そうかもしれないです。何かさっきから頭痛くて……」
 気持ちの問題かと思っていたけど、確かに頭が痛かった。
 
「仕事、残ってるなら回してくれていいよ」
「大丈夫です。急ぎではないので」
「うん。もう定時だし帰りな」
「はい。そうさせてもらいます」

 立ち上がるとふらりとする。心配そうな辰巳主任に作り笑いをして部署を後にした。

 これ、まずいな。自分の体調も気づかなかった。念のため薬とちょっとした食料を買い込んだ。家に着くと、カクンと膝をついてしまった。体に力が入らない。関節が痛くなってきて――……これ、熱が出てる。働かない頭でなんとか着替え、ベットに横になった。

 ――週末の約束、キャンセルしなきゃ。ぼんやりと正常な判断が出来ない頭でそう思ってスマホを握り締めた。