「うわぁっ!」


攻防中、俺は桜の花びらに足をとられて滑ってしまった。


「ハル、危ないっ!」


――ガタガタッ!

アオの叫び声と同時に、俺はボールともに勢いよく“何か”にぶつかってしまった。


「いってぇ……」


ゆっくりと体を起こす。

幸い、ケガはなかったけれど――俺の目の前には、倒れたキャンバスとイーゼルがあった。

それらは桜の花びらと土にまみれてしまっている。


「やばっ!」


俺は急いでイーゼルを起こして、そこにキャンバスを立てかけると――そこには、思わず息を吞むほどの絵が描かれていた。


並木道に沿って優雅に咲き誇る桜の花々。

それは朝日に照らされていて、美しい薄紅色のトンネルを作っている。

その隙間から陽光が差しこみ、桜の花びらがキラキラと輝いていた。

そして、春風に乗って舞い落ちた無数の花びらは、地面いっぱいに広がっている。

春風がサアッ吹くと、絵全体が風に揺れているように見えた。


これは、ここから見た桜並木の絵だ。