「そう簡単には抜かせねぇよ!」


足元の花びらに気を取られた一瞬を狙って、アオが俺の進路を塞ぐ。

アオのディフェンスが(かた)くて、なかなか抜けだせない。

少しでも気を抜くと、そのまま一気にアオにボールを奪われそうになる。

アオとは、幼いころからの付き合いだ。

だからこそ、こうしてプレーをしていると、アオがどれだけ練習していたのかがわかる。

自分から決して言わないけれど、俺の知らないところでコツコツと自主練習するほどの努力家だ。

アオは受験が終わってからもずっとサッカーの練習していたことを、俺は知っている。


「ハル、今日は俺が勝たせてもらうからなっ!」


そう言って、アオは俺からボールを奪い取ろうと足を延ばす。

マズいっ!

このままだと、アオにボールを持っていかれてしまう。


「そうはさせねぇよっ!」


俺はアオの意表をついて、ボールをポンッと宙高く蹴り上げた。

きれいな弧を描いたボールは、アオの頭上を通り越していく。


「くそっ!」


アオの悔しそうな声に、俺の口元がほころぶ。


アオはただのチームメイトじゃなくて、お互いの実力を高めあってきたライバルでもある。

だからこそ、いつも思うんだ――アオには、絶対に負けたくないって。


「アオ! 悪いけど、今日の勝負は俺がもらった!」


勝利を確信して、ドリブルしながらゴールにめがけて一直線に駆けていた――その瞬間。