「なぎ、おはよう!」


考え事をしながら教室に入ると、心地よいあいさつの声が教室に響く。

誰かと思ったら、三池(みいけ)沙夜(さよ)が笑顔で手を振っていた。

沙夜は1年生のときからずっと同じクラスで、親友だ。


「おはよう、沙夜」


私も沙夜にあいさつをして、手を振り返す。


「高校3年間、なぎと同じクラスで本当にうれしい!」

「私もだよ!」


入学したときから沙夜とクラスが一度も離れなかったのは、もはや奇跡としか言いようがない。


「なぎ、三池、おはよう」


沙夜と何気なく会話をしていると、九条(くじょう)敦也(あつや)くんがやってきた。

九条くんとは、2年生のときに初めて同じクラスになったけど、入学してからずっと同じ美術部に所属していたので、おたがいのことはよく知っている。


「「おはよう」」


沙夜と声を揃えて九条くんにあいさつしたあと、私はふたりと他愛のない話をした。