……そうだ。

今まで描いた絵の中でいちばん楽しいと思えたものを描けば、もしかして――。

そう思ったときに思い浮かんだのは、私が初めて入賞した“世界絵画コンクール”の【夢】という絵だった。

私がこの絵に選んだ風景は、桜並木だ。

それを描けば、また絵を描くことの楽しさを思い出せるかもしれない。

そう思って、今朝校内にある桜並木を描いてみた。


……あれ?

私って、今までどうやって桜の絵を描いていたんだっけ。


上手く描くどころか、描き方自体を忘れてしまうほど、私はスランプに陥っていたのだ。


桜並木の絵を描くことが、スランプから抜け出せる唯一の希望だったのに……。

それが描けないとなると、もうどうすることもできない。


こんなことになるのなら、自分の絵をコンクールに出すんじゃなかった……。


そんな後悔の念が押し寄せて、自暴自棄(じぼうじき)になる。


私、これからどうすればいいんだろう――。