そして、応募してから数ヶ月後。

忘れたころに、世界絵画コンクールの結果が発表された。


その年の大賞に選ばれた絵は――【夢】


桜並木の下のベンチに座っている女の子が、グラウンドでサッカーをする男の子をスケッチしている絵だ。


この結果に、私は驚きを隠せなかった。

だって、この絵は――私が描いたものだったから。


まさか、自分の作品が“世界絵画コンクール”の大賞に選ばれるなんて。

そんなことは夢にも思っていなかったので、最初は信じられなかった。

でも、授賞式に参加したり、自分の絵が美術館に展示されているのを見たりしているうちに、これは現実なんだと実感していった。

今まで自分の世界だけで完結していた絵。

それを誰かに評価されることが、こんなにもうれしいことだったなんて。

もっといろんなコンクールに挑戦してみたい。

自分の絵がどこまで通用するのかを――。


そのあと、応募したさまざまなコンクールで次々と入賞し、私は全校生徒の前で表彰されることが増えた。


「なぎって、本当に絵を描くのが上手だよね」

「次のコンクールも、絶対になぎちゃんの描いた絵が入賞するに決まってるよ!」

「将来、なぎは画家になれそうだな」

「桜庭さんは、我が校の(ほこ)りだわ」


周囲からの期待と賞賛。

それに応えようと、私はコンクールで結果を出すために努力を重ねた。