「はぁ……」


たまらず、胸の奥から深いため息がもれる。

一刻も早く、スランプから脱出したいのに。
そこからなかなか抜け出せなくて、焦る気持ちだけが募っていく。

春になって桜が咲けば、また自分らしく絵を描けるかもしれない。
そう期待したけれど、残念ながらそれは叶わなかった。

――ずっと絵を描き続ける。

“あの男の子”と約束したから、本当は自分の夢を諦めたくはないけれど。

このままの状態が続くなら、現実を見て進路変更も視野に入れなければならない。

でも、私から絵を取ってしまったら、いったいなにが残るのだろう。

この先、絵を描くより夢中になれるものに出会えるのだろうか……。

そんな葛藤(かっとう)を抱きながら、美術室のある旧校舎に足を踏み入れようとした――そのときだった。


「あのっ! ちょっと待ってくださいっ!」


背後から男の子の声が聞こえた。

私は足を止めて振り返る。