私は中庭から、吹奏楽部の部室へと歩いた。


きっと、結愛先輩も吹奏楽部に来るはずだ。



ガラッ。

部室のドアを開けて、自分の席に座る。

フルートのケースに手を伸ばした時、結愛先

輩の姿を発見した。


(トランペットを吹いてる…)


「結愛先輩、ここの音が難しくて…。コツと

かありますか?」

「あぁ、この音はね……」


結愛先輩がいつものように、優しく後輩に教

える。


「深月ちゃん、どうかしたの?」

「!」

しばらく結愛先輩を見ていたから、声を掛け

られてしまった。


「い、いえ、何でもありませんっ」

「そう…?ならよかった。何かあったら、い

つでも聞いてね」