次なる視界/その10
ケイコ


新生南玉連合の総集会か…

まあ、OB・OG連や主要幹部が何人も抜け、公認チームだったレッド・ドッグスも去った今は、幹部会ってのは成立しないもんな…

ついこの間、多美が初めての幹部会に列席できて感激してたのを思いだすと何ともだ…

でも、残ったメンバーに悲壮感はないよ

無論私も…

でも、麻衣の話はやっぱり衝撃を受けたわ


...


「…ってことだからさ、総集会当日はおまえの家まで迎えに行くよ。ああ、4時前にはつくと思う」

「悪いね。じゃあ、その時間には出れるようにして待ってる」

「うん…。それで、一応、昨日の本郷の一件、今話しておこうと思うんだけど…。いいか?」

「ああ、聞かせてもらうよ」

正直、多美の口から出る言葉は聞きたくなかった

それが本音だったわ

どうせ凄惨な顛末だってことはわかってるし…

第一、荒子さんには、私自身が麻衣に対して妥協はしないでくれって訴えちゃった訳だし‥

ふう‥、ってとこだよ、ホント…


...


私は電話で多美からコトの次第を黙って聞いてた

実際、現場の生々しさは、受話器からの多美の語りっぷりで十分伝わったよ

「…おけい、私は本郷がまだ許せないよ。でも、昨日のヤツのケジメは見事だった。まあ、敵ながらあっぱれってとこだわ。あれだけの覚悟を持った上で、荒子さんを拉致監禁して足の骨を折ったってんだから、そんなこと考えてたら、なんか背筋寒くなってね。建物の中は40度以上のサウナ状態だったのにさ…」

多美は旧体育館の中での出来事を話し終わっても、いろいろ”補足”をしてくれてた

「…だって、ヤツは荒子さんを”終えた"後、その足で火の玉へ直行してすぐお前とタイマンだぜ!そんで、あの壮絶な死闘をやってのけたんだしな。体力もスゲーが、ハートもハンパねーよ、アイツ…。実質、総指揮も兼ねて、相和会も段取りして…。化けもんだわ、本郷麻衣は…」

多美にしては珍しいいいっぷりだった

それは、もう参りましたってとこかな…


...


「麻衣の根性は、火の玉で戦った私も肌でいやと言うほど味わった訳だから、多美の今の話、よく伝わったわ。いずれにしても、荒子さんはこれで、今回の件を清算したんだよな?」

「ああ、それは間違いない。あの人が後々引きずることはないよ。あの夜の本郷との遺恨はこれで終わった。で、次ってことだわ」

次か…

私にとっての次はあまりに未知なる道だよな…