次なる視界/その7
多美代



この春、西咲学院に入学後、南玉連合に加盟した私は、この学校の先輩でもある荒子さんの親衛隊に就いた

周囲からはイケイケのコピー軍団と皮肉られ、振舞いが粗暴だと非難を浴びることも多かったよ

だけど、私は純粋に荒子イズム推進の気持ちから先頭に立っているという自負があったわ

確かに熱くなりすぎて、視野が狭かった点は否めない

反南玉勢力側から言わせれば、それが驕りだ、何様なんだということだったんだろう

今回、総長ともども、私達はそこを素直に認めて反省している

そしてそれを教えてくれたのが、おけいと本郷麻衣だったんだろうね

二人は対照的ではあるけど、どこかピュアな目線をしっかり備えてる気がするよ


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荒子総長とは、”そこ”をよく話しあった

その上でこれから南玉をどう変えて、いかに立て直していくか…

総長が考えついた具体的な新生南玉連合の目指す姿は、まさに大胆かつ斬新なものだった

それは南玉連合を2派分けし、それぞれの構成人員は基本的に1年のメンバーとし、2年の幹部や先輩にはその枠外で従来のOG連の役割を果たしてもらうというものだった

で、さらにその全体を荒子総長が統括する…

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荒子総長のこの構想を一緒に聞いていた、現執行部の一員である恵川先輩も抵抗感は見せていたが、ここまで生まれ変わらなければボロボロになった現在の南玉連合は再建できないという結論に達したようだった

恵川先輩からしても、総長補佐の矢吹さんや湯本さん、それにまだ不確定だけど、木戸先輩らの主だった幹部・重鎮メンバーが去って行く現状には、さすがに強い危機感を持っていたはずだしね

だから今後、反南玉の立場で敷かれる見込んでるキャビネット体制下の勢力と対峙するとなれば、これは容易な対処では通用しないと…

そして今日、本郷とケリを着けた総長はさらに詳細なプランを告げてくれた


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「各校側のグループは、ケイちゃんをトップに就かせようと思う。それを、多美と冴木がサブで補佐してやってほしい。どうだ?」

総長も私には、この人事をほのめかすような話をしていたんで、心の準備はできていた

「はい、やらせてもらいます!」

私は即答した

「よし、頼むぞ、多美…。それで、お前から見てこれに反対は出ると思うか?なにしろ、横田競子は数日前に南玉入りした新顔だし1年だ。前代未聞の人事抜擢だからなあ…」

「1年は概ね賛成すると見てます。とにかく今の危機的状況は全員が深刻に受け止めてますから。みんな、火の玉でおけいが本郷と引き分けに持ち込んだことで、南玉を救った救世主と捉えていますし。むしろ、先輩方からは反対意見が出るんじゃないでしょうか?」

「まあ、私の見立てじゃ、2派とも1年のみで固めるって了承が得られれば、みな反対まではしないと踏んでる。一応、いづみにはそれとなく了解をとってるしな」

「そうですか!でも、当のおけい本人はどうなんですかね。アイツの性格じゃあ、新入りだからって固辞してくると思いますが…」

「ハハハ…、ケイちゃんの方は私に任せればいい。あの子のことは私が誰よりもわかってるつもりだから」

そうだよな…

荒子さんとおけいは小中学生の時分から、紅丸さんに見初められていた筋金入り同士だし、きっと深いところで心が結びついているんだろう

おけいも2派での若返り案は総長から聞かされていて、賛成してるしね