次なる視界/その6
多美代



荒子総長と本郷麻衣の壮絶な”儀式”は終わったよ

「じゃあ、荒子、俺らは引き上げるよ」

「先輩、お手数を煩わせ、申し訳ありませんでした。本郷へは妥協したように映ったと思いますが、私なりに考えがありましたので…」

荒子さんは五條先輩に深く頭を下げた

「いや、分かってる。西咲のみんなは南玉の事情とかはよく知り得ないしな。俺からも学内にはうまく伝えるからさ」

「ありがとうございます」

「本田、今後も荒子を頼むな」

「はい。先輩、本日はお疲れ様でした!」

旧体育館前からは皆が立ち去り、荒子さんと私だけになった

「…多美、お前とは今日のうちに話しておきたいことがあるんだ。時間いいか?」

「はい…」

”コト”が終わったあと、さっそく私は荒子総長から話を聞くこととなった



...


二人は近くの公園で、ベンチに並んで座った

荒子さんはまだギブスの取れていない左足を投げ出し、ふーっと大きく息をついてる

「大丈夫ですか?」

荒子総長はやや疲れた表情だったので、思わずそう言葉をかけたが、総長は「ああ、大丈夫だよ」と笑顔で答えてくれた

「…今日は最後まで冷静でいてくれて助かった。礼を言うよ、多美」

「いえ、私は事前に総長のこれからの考えを聞かされていましたから。でも、内心は本郷を半殺しにしたい気持ちを抑えるので必死でした。他の先輩たちの気持ちはよくわかります」

「うん。五條先輩の言ったとおり、お前以外は南玉を取り巻いていた実情とか、今までの経緯を細かく把握していないからな。…私としては本郷に与したり、温情でまあいいやってのは一切なかった。いろいろ考えを巡らした上で、ああしたんだ」

総長はきっぱりと言い切ってくれた

「はい。私も総長の意図するところは承知してますので…」

「うん…。そこで多美、さっそく総集会を持とう。そこで新生南玉連合の方針を決める。本郷と津波を含むドッグスの復帰が承認されても、この前話した組織形態は崩さず、組み込むことになる」

やはり総長は、本郷とドッグスが戻ることも想定に入れて今後の再建をイメージしていたようだ