次なる視界/その4
祥子



麻衣はゆっくりした語り口だった

「…春先からの私たちが先導したアジテーションによって、この都県境に大激震を起こした訳だけど、その結果イコール再編成ってことだよね。しかも必然性を伴った…。要はここで大きな枠組みは方向性を見たってことでしょ」

ああ、麻衣のその見解に異論はない

「…ということで、覇権を争う局面は終わったんだから、今までみたいに、あえて”カタマリ”を作る必要はない。だからね、この後各々のスタンスに従って個々が各々、猛ればいいのよ。私はこういう気質だから、横田競子と刺激し合い、ぶつかっていく…」

なんか…、いつになく改まった話しっぷりがちょっと気になった…

「…みんなもさ、それぞれ猛る思いの丈で突っ走っていくでしょうから、いずれ、その先に何がしかが目の前を立ち塞ぐこともあるだろうね。決して逃げずにぶつかっていった人間たちが、どこかでまた同舟に辿り着くと思うよ」

それって、再びこのメンツが共通の敵の前で巡り合うっていうことか…?

...


麻衣は続けた…

「…従って、当面は南玉も反南玉もお手々繋いで仲良くは所詮無理だし、その必要もないけど、敵味方って関係に捉えるのはナンセンスだと思うんだ。…祥子、そういうことなんで、仮にアンタとドッグスが南玉に復帰して私はキャビネットのフレーム内に入ったとしても、私はオポジションを意識することなんかないわ。私は自分のスタンスで、どこにいようがカモシカとは向き合っていくつもりさ」

「ああ、わかった。みんな個々で猛っていけばいいんだな。そんで、いつかまた、例えば何か共通の巨大な障害を前に居合わせることになれば、再び手を携えると…。知恵と力を合わせて」

私がそう言ったら真樹子さんが目を細めて続いた

「でも、そう言う時がまた来るのかしら…」

そして麻衣が答えた

「あると思う。そんなに遠くない時期に…」

今度は三田村さんが麻衣に尋ねた

「それ…、例のカンかい?」

「はい…。それと、相馬会長もそんな予測を抱いて、私の後ろ盾をしてくれてる気がするんです」

「…」

3人は無言で麻衣を見つめていた