絶叫、そして契り/その6
麻衣



さっそく来たな…、浅黒のチビめ

こいつとは、これからもずっと張り合っていくコトになるしな

そう考えると、カッカしてきたわ、はは…

まあ、今日はお前のボスと決着なんで、うざいから端寄ってろよな

そうこうしてると、こっちに3人、いや5人走ってきた

全部女だ…

フン、用意万端ってとこね


...


「…多美ー!カギ借りてきたよ…」

「おお、ご苦労さん。開けてくれ」

ガラガラガラ…

旧体育館とやらは、おそらく新しい体育館を作った際、その一部を用具置き場として残した建物のようだ

重たそうな鉄製の引き戸が開くと、中はカゴに入ったバスケットボールやら跳び箱やらハードルなどが、割かし整理されて置かれていた

で…、中に入った一人が早速電気をつけたわ

ふふ、そうか…

ここならドアを閉めれば”叫び声”が上がっても、ちょっと離れた場所なら聞こえなしだろうし、スペース的にも”用”が足りるくらいはあるか…


...


「おい、本郷!中入ってろ」

浅黒は私の肩を軽くだが押っぺした

さすがに本田のヤロウ、相当殺気立ってるな

室内に入った私の前後左右には、いつの間にか4人が等間隔で私を取り囲むように立ってる

逃げねーって、今さら…

ん…?

外がざわめいてるぞ…

「多美!総長が見えたわ…」

ついにお目みえだ…!

...


赤い狂犬こと、南玉連合の合田荒子総長が建物の入口に姿を現した…

眩しい西陽を背に、それはまるで後光のようだった

いや、眩しいのはあなたのオーラですよ、荒子さん…

両側に女子生徒二人がぴたりと付き、荒子さんは松葉杖でゆっくり中へ入ってくる

「本郷…」

狂犬の目は言うまでもなかくギラギラだった

ハハハ…

惚れ惚れしますよ、あなたの獣のような目には…

...


「じゃあ、後はお任せください…」

本田が外と中の両方にむかってそう声をかけた

すると、今まで中にいた4人のうち、3人が外へ出て、荒子さんと両脇の二人、それ以外に本田を含め3人が入ってきた

内、男はたった一人で、残りは全部女だった

ガラガラガラ…

ガチャッ!

ここで扉は外の西陽を完全に遮断した

先方は合計7人だな

私の後方に3人付き、正面と左右に残り4人か…

荒子さんは私の右前方で二人の補助を受けながら、松葉杖で支えて立っていた

そして鋭い視線を、私に投げ続けている

いよいよか…

密室の高温と湿気もあり、私の全身からは既に汗が滲み出ていた…