○公園(夕)
咲良、ベンチに座っている。
溜息をつく。
(前田さんの事は、中学から気になっていた)
○回想・中学校・教室
学ランの咲良。
輪の中心にいる朱莉を見ている。
(前田さんは明るくて、みんなの中心にいて)
○回想・同・廊下
咲良、歩いて来る。
すると、朱莉が一人で窓の外を眺めているのに気付く。
寂し気な横顔。
咲良(なのに、何処か寂しそうだった)
(それから、すごく気になり始めて)
○回想・バスの中
朱莉、手すりに掴まって教科書を読んでいる。
咲良、少し離れたところから、朱莉をちらと見る。
咲良(気付けば目で追うようになっていた)
〇回想・高校・理科室
咲良(それから高校生になって、あの日)
模型の心臓を胸に抱き締める朱莉。
朱莉「応援させて下さい! 私に!」
咲良(え・・・前田さんが俺を・・・?)
(焦って、何て言えばいいか分からず・・・)
咲良「放課後、うちに来て」
(変な事を口走ってしまった)
〇回想・団地・風呂場(夕)
咲良(それで、うちに来てくれて)
咲良が朱莉の膝の上に頭を乗せて寝ている。
朱莉「猫みたい・・・欲しい・・・」
咲良(猫・・・? 猫になれば、近づけるのかな)
咲良「猫・・・、好きなの?」
(猫になったのは、そんな理由だった)
〇回想・同・居間(夕)
朱莉、咲良、三つ子とご飯を食べている。
咲良(前田さんは、俺をどう思ってるんだろう)
(ここで好きだって言えば簡単だけど)
(なんとなく、そう言ったら、離れて行く気がする)
(だからー)
〇回想・ベランダ(夕)
咲良、ベランダの柵に置かれた朱莉の手に自分の手を重ねる。
咲良「ずっと居たらいいじゃん」
(これが精一杯の伝え方だった)
回想終わり。
〇高校・教室
授業中。
咲良、ちらと朱莉の方を見る。
咲良(情けない・・・)
がっくりする咲良。
〇サウナ店(夕)
咲良、元気ない様子で熱波を送る。
向かいに座る水着姿の女性B。
女性B「もー元気ないなー、ちゃんと熱波がんばんなさいよ」
咲良「すいません」
女性B「何? 恋でもしてるの?」
咲良「違います」
女性B「いいや、恋だわ!恋のニオイがする!」
咲良「・・・」
女性B「はい、図星!」
咲良「何で分かるんですか・・・」
女性B「こっちは何年、恋してると思ってんのよ。失恋も含めて・・・」
咲良「ははは・・・」
女性B「咲良くん、いい? 恋はね、惚れた方から仕掛けないと何も始まらないよ?」
咲良「仕掛ける・・・?」
女性B「そうね、例えば」
咲良に耳打ちする。
咲良、カッと頬を赤らめる。
咲良「無理、無理ですよ!」
女性B「何言ってんの、このくらいしなきゃ! 人を惚れさせるって簡単じゃないんだからね~?」
うーんと考え込む咲良。
咲良「でも、嫌われるかもしれないです・・・」
女性B「何も思われてないより、嫌われた方がいいじゃない」
咲良「いいのかな・・・」
女性B「しょうがないなあ。じゃあ、初心者用にこういうのはどう?」
と、耳打ち。
咲良、また頬を赤くする。
咲良「だから、無理ですって!」
女性B「咲良、こういうのは無理じゃなくて、やるの、やるのよ! そして、恋の熱波を彼女に送り届けなさい!」
〇道(夕)
朱莉と咲良が黙って歩いている。
朱莉(話って何だろう)
咲良「あ、あのさ」
と、ぽつぽつ雨が降って来る。
朱莉「あ・・・」
空を見上げる。
咲良「あそこで雨宿りしよっか」
朱莉「あ、うん」
〇公園(夕)
朱莉と咲良はドーム型の遊具の中で雨宿りしている。
二人、じっと黙っている。
朱莉、身震いして、くしゃみをする。
咲良「もっとこっち来る?」
朱莉「う、うん」
朱莉、咲良の方へ近づく。
朱莉「さ、咲良くん、話って・・・?」
咲良、ちょこんと朱莉の肩に寄りかかる。
朱莉「咲良くん?」
咲良「にゃ、にゃあ・・・」
咲良が猫化している。
朱莉「碧?」
咲良「(照れ臭そうに)です・・・」
朱莉「そ、そっか、猫・・・だもんね、これは」
咲良「うん」
朱莉「ペットってこういうことするもんね」
咲良「する・・・」
朱莉「だよね・・・」
と言いながら、つい咲良のゴツゴツした手、細いが程よく筋肉のある腕に目がいってしまう。
今更、男の子である事を意識する。
朱莉、おどおどして、
朱莉(や、やばい、何だろう、この気持ち・・・。初めての気持ち・・・)
と、咲良と目がばっちり合う。
猫耳が消え、男の子の咲良がいる。
朱莉「咲良くん・・・」
朱莉(が、欲しいーー)
朱莉、突然膨らんだ自分の気持ちに驚く。
咲良「前田さん・・・」
咲良が朱莉を見つめる。
朱莉も見つめ返す。
咲良が徐々に顔を近づけて、キスが出来る距離になる。
朱莉(咲良くんが欲しい、もっと触れたいーー)
(でもーー)
ぱっと顔を逸らす朱莉。
朱莉「ごめん・・・」
咲良「?」
朱莉「ごめん、咲良くん!」
朱莉、走り去って行く。
○道(夕)
土砂降りの中、走る朱莉。
朱莉(こんな気持ち、推しに抱くなんて!)
(ファン失格だー!!!)
咲良、ベンチに座っている。
溜息をつく。
(前田さんの事は、中学から気になっていた)
○回想・中学校・教室
学ランの咲良。
輪の中心にいる朱莉を見ている。
(前田さんは明るくて、みんなの中心にいて)
○回想・同・廊下
咲良、歩いて来る。
すると、朱莉が一人で窓の外を眺めているのに気付く。
寂し気な横顔。
咲良(なのに、何処か寂しそうだった)
(それから、すごく気になり始めて)
○回想・バスの中
朱莉、手すりに掴まって教科書を読んでいる。
咲良、少し離れたところから、朱莉をちらと見る。
咲良(気付けば目で追うようになっていた)
〇回想・高校・理科室
咲良(それから高校生になって、あの日)
模型の心臓を胸に抱き締める朱莉。
朱莉「応援させて下さい! 私に!」
咲良(え・・・前田さんが俺を・・・?)
(焦って、何て言えばいいか分からず・・・)
咲良「放課後、うちに来て」
(変な事を口走ってしまった)
〇回想・団地・風呂場(夕)
咲良(それで、うちに来てくれて)
咲良が朱莉の膝の上に頭を乗せて寝ている。
朱莉「猫みたい・・・欲しい・・・」
咲良(猫・・・? 猫になれば、近づけるのかな)
咲良「猫・・・、好きなの?」
(猫になったのは、そんな理由だった)
〇回想・同・居間(夕)
朱莉、咲良、三つ子とご飯を食べている。
咲良(前田さんは、俺をどう思ってるんだろう)
(ここで好きだって言えば簡単だけど)
(なんとなく、そう言ったら、離れて行く気がする)
(だからー)
〇回想・ベランダ(夕)
咲良、ベランダの柵に置かれた朱莉の手に自分の手を重ねる。
咲良「ずっと居たらいいじゃん」
(これが精一杯の伝え方だった)
回想終わり。
〇高校・教室
授業中。
咲良、ちらと朱莉の方を見る。
咲良(情けない・・・)
がっくりする咲良。
〇サウナ店(夕)
咲良、元気ない様子で熱波を送る。
向かいに座る水着姿の女性B。
女性B「もー元気ないなー、ちゃんと熱波がんばんなさいよ」
咲良「すいません」
女性B「何? 恋でもしてるの?」
咲良「違います」
女性B「いいや、恋だわ!恋のニオイがする!」
咲良「・・・」
女性B「はい、図星!」
咲良「何で分かるんですか・・・」
女性B「こっちは何年、恋してると思ってんのよ。失恋も含めて・・・」
咲良「ははは・・・」
女性B「咲良くん、いい? 恋はね、惚れた方から仕掛けないと何も始まらないよ?」
咲良「仕掛ける・・・?」
女性B「そうね、例えば」
咲良に耳打ちする。
咲良、カッと頬を赤らめる。
咲良「無理、無理ですよ!」
女性B「何言ってんの、このくらいしなきゃ! 人を惚れさせるって簡単じゃないんだからね~?」
うーんと考え込む咲良。
咲良「でも、嫌われるかもしれないです・・・」
女性B「何も思われてないより、嫌われた方がいいじゃない」
咲良「いいのかな・・・」
女性B「しょうがないなあ。じゃあ、初心者用にこういうのはどう?」
と、耳打ち。
咲良、また頬を赤くする。
咲良「だから、無理ですって!」
女性B「咲良、こういうのは無理じゃなくて、やるの、やるのよ! そして、恋の熱波を彼女に送り届けなさい!」
〇道(夕)
朱莉と咲良が黙って歩いている。
朱莉(話って何だろう)
咲良「あ、あのさ」
と、ぽつぽつ雨が降って来る。
朱莉「あ・・・」
空を見上げる。
咲良「あそこで雨宿りしよっか」
朱莉「あ、うん」
〇公園(夕)
朱莉と咲良はドーム型の遊具の中で雨宿りしている。
二人、じっと黙っている。
朱莉、身震いして、くしゃみをする。
咲良「もっとこっち来る?」
朱莉「う、うん」
朱莉、咲良の方へ近づく。
朱莉「さ、咲良くん、話って・・・?」
咲良、ちょこんと朱莉の肩に寄りかかる。
朱莉「咲良くん?」
咲良「にゃ、にゃあ・・・」
咲良が猫化している。
朱莉「碧?」
咲良「(照れ臭そうに)です・・・」
朱莉「そ、そっか、猫・・・だもんね、これは」
咲良「うん」
朱莉「ペットってこういうことするもんね」
咲良「する・・・」
朱莉「だよね・・・」
と言いながら、つい咲良のゴツゴツした手、細いが程よく筋肉のある腕に目がいってしまう。
今更、男の子である事を意識する。
朱莉、おどおどして、
朱莉(や、やばい、何だろう、この気持ち・・・。初めての気持ち・・・)
と、咲良と目がばっちり合う。
猫耳が消え、男の子の咲良がいる。
朱莉「咲良くん・・・」
朱莉(が、欲しいーー)
朱莉、突然膨らんだ自分の気持ちに驚く。
咲良「前田さん・・・」
咲良が朱莉を見つめる。
朱莉も見つめ返す。
咲良が徐々に顔を近づけて、キスが出来る距離になる。
朱莉(咲良くんが欲しい、もっと触れたいーー)
(でもーー)
ぱっと顔を逸らす朱莉。
朱莉「ごめん・・・」
咲良「?」
朱莉「ごめん、咲良くん!」
朱莉、走り去って行く。
○道(夕)
土砂降りの中、走る朱莉。
朱莉(こんな気持ち、推しに抱くなんて!)
(ファン失格だー!!!)