『そこそこお金はあるし、田舎暮らしもいいかもなぁ』

 都会生まれの都会育ち。
 田舎がどんなものかテレビでしか見たことがないから、なかなか踏ん切りがつかなかったけれど、そろそろ重い腰をあげる時なのかもしれない。

 そんなことをつらつらと考えていたら、いつものめまいに襲われた。
 視界が白く塗りつぶされていく。
 意識が遠ざかる中、これは初めての救急車が体験できるかな、なんてのんきなことを考えた。

 結局意識は戻らず、こうして生まれ変わってしまったらしい。
 とはいえ、こうして前世の記憶が戻っても、前世に対する未練はないようだ。

 田舎に生まれ、田舎で育ち、庭師(ガーデナー)の資格を得て、王都にあるとある男爵家の屋敷でゆったりガーデニング生活。
 最後に願ったゆとりのある暮らしが、今世で叶ったからかもしれない。