流れ込んできた前世の記憶を、ペリウィンクルはさして驚きもせずに受け入れた。
 その顔がどこか満足げなのは、今世が彼女の希望通りのものだったからだろう。

『来世こそはゆとりのある生活を送りたい』

 とは、前世の彼女の想いである。

 前世の彼女は、いわゆる社畜というものだった。
 朝早く起きて職場へ行き、くたくたになるまで仕事をして、夜遅くに帰宅する。
 次第にぼんやりすることが増えてきて、めまいに襲われることもあった。
 見かねた両親に退職を勧められたが、上司が怖すぎて申し出ることもできない。

 そんな中、唯一の楽しみがスマートフォンで気軽に遊べるアプリゲームだった。
 社畜である彼女には、まとまった自由な時間などない。通勤の時間や眠る前のわずかな時間を縫うように、イケメンと植物に癒やしを求めてコイバナをプレイしていた。

 幸い、時間はないがお金だけはあったから、欲望のままに課金しまくった。
 すてきなスチルに、耳に優しいイケボ。そして、目に優しい植物。
 コイバナだけが、生きる糧だった。