ローズマリーの言葉に、ペリウィンクルの頬が引きつった。
 言って良いものか、と逡巡する。

 目の前のお嬢様はとても賢いはずなのに、時折びっくりするくらいおまぬけさんになる。
 ローズマリーによるヒロインいじめについては、特にその傾向が強かった。
 だってペリウィンクルが知っているものはどれもこれも、意地悪とは言えないようなものばかりなのだ。

 一件目。
 これは、先日ヴィアベルから聞いた話だが、妖精の茶会を学ぶ場で、茶を淹れようとしていたヒロインの手をローズマリーは叩いたらしい。
 これだけなら意地悪だと言えるのだが、この話にはオチがある。
 なんとヒロインが持っていたのは猛毒のアコナイト。全株有毒で花粉さえ毒性のある危険な植物で、ローズマリーが手から叩き落としていなかったら、ヒロイン死亡エンドもあり得た。

 叩かれたヒロインは顔を真っ赤にして「暴力反対」と喚き、ローズマリーも悪役令嬢らしく「ごめんあそばせ」と不遜な態度で謝っていたので周囲も最初はいじめかと思ったらしい。
 しかし、床に落ちていたのがアコナイトだと知れた瞬間、みんなが白い目でヒロインを見たのは言うまでもない。