満を持して取り出したのは、ナッツ油にセントジョンズワートを漬け込んだ浸出油である。
 ペリウィンクルは、ビーカーの中に浸出油とミツロウを入れると、鍋に湯を入れてビーカーを浸した。
 ヘラでかき混ぜながらミツロウを溶かし、ビーカーを鍋から引き上げてさらにかき混ぜる。
 完全に固まる前に容器へ入れたら、セントジョンズワートの軟膏の完成だ。

 手際良く作業をするペリウィンクルに、ローズマリーとサントリナは拍手喝采である。

「すごいね、ペリウィンクルさん。この浸出油というのは、どれくらい漬け込んでおけば作れるものなのだろうか?」

「そうですね、二週間くらいがベストです」

「結構かかるものなのだね」

「でも、一度作れば三カ月ほどは保存できますから。便利ですよ?」

「ニゲラは武芸に秀でているが、守ることが苦手でね。攻撃が最大の防御だと言って聞かないんだ。ボクとの鍛錬ではいつも、切り傷の一つ二つついてしまう。だから、この軟膏があると、とても助かるよ」

 そう言って微笑むサントリナは、思わずペリウィンクルとローズマリーが言葉を忘れてしまったくらい、聖母のような神々しさがあった。
 ペリウィンクルなんて、無意識に手を合わせて拝んでしまったほどである。