ペリウィンクルは知らないのだ。
 彼女は幼い頃からヴィアベルの庇護下にあったので当たり前になっているが、妖精の噂話を聞かせてもらえる庭師は、ごくわずかしか存在しない。

 妖精の噂話を聞けるということは、それだけ妖精たちに信頼されているということ。
 すなわち、難関と言われている庭師の資格を持つ者の中でも、さらにエリートだということである。

 ローズマリーとセリは、その稀な庭師がペリウィンクルだったことに驚いたのだ。
 どこにでもいそうな平々凡々とした少女。ただのモブだと思ったが、とんだチートである。
 妖精王の茶会の準備を任されたのも、そういう背景があったからに違いない。

 素知らぬ顔で紅茶のカップに口をつけながら、ローズマリーは思う。
 ペリウィンクルはただのモブなのだろうか、と。

 思案するローズマリーに、憧れの存在を見たような顔をしているセリ、そして困惑するペリウィンクル。
 そんな彼女たちを前にして、それまで沈黙を貫いていたサントリナが、ようやく口を開いた。