「それで、ペリ。あなた、花泥棒に心当たりはありますの?」

 ローズマリーの箱庭は、彼女自身よりも専属庭師であるペリウィンクルの方がくわしい。
 そう思ったからこその質問だったのだが、問われたペリウィンクルは、どう答えるべきかと考えあぐねていた。

 ローズマリーに言いたくないことがあるのか、それともセリやサントリナに聞かせたくないことなのか。
 わりとなんでもあけすけに物を言う彼女がこんな風になることは珍しく、何があったのかしらとローズマリーは興味津々である。

「私が直接現場を見たわけではないので定かではありませんが……妖精たちの噂によれば、最近、ニゲラ様から甘い香りがするのだとか。その香りのせいでニゲラ様と契約している妖精が、ほとほと困っていると聞きました」

 ペリウィンクルの話を聞いて、ローズマリーとセリは「あらまぁ」と感嘆の声を漏らした。
 どうして彼女たちがそんな声を出したのかわからず、ペリウィンクルはきょとんとした顔をしてから、困ったように視線を泳がせる。