悠からかな?

やっぱり晩御飯食べずに帰ってきて、なんて言われたらがっかりだけど。

バッグからスマホを取り出すと、画面には見たこともない番号からの着信だった。

恐る恐る耳に当てる。

「……はい」

『あの、申し訳ございません。こちらのお電話、塩見悠さんの奥様でいらっしゃいますでしょうか?』

悠の奥様?

正確には奥様じゃないけど。一体この電話は誰?

詐欺だったら困ると思い、眉間に皺を寄せて声のトーンを低めに答える。

「どちら様でしょうか?」

『失礼致しました。こちら、警察のものですが』

警察?

急に胸がざわつき始めた。

『実は、塩見悠さんが事故に遭われまして……』

その瞬間頭が真っ白になる。

悠が事故?警察からの電話?

不安でしかないフレーズが並んでいる。

血の気が引いてく感覚。

「智?」

心配そうに私の顔を覗き込む母と目があって、我に返る。

「あの、悠は……?」

声が震えていた。

『今救急車で中央病院に向かっているとのことです。奥様も今からすぐ病院に向かっていただけますか?』

「悠は……あの、……大丈夫なんでしょうか?」

色んな不安要素が胸を押しつぶし、それだけの言葉を言うのにどれくらい時間がかかるんだろうっていうくらいかかりながら言った。

『今からちょうど一時間前、悠さんのバイクと物流トラックとが接触事故を起こしました。私どもが到着した時は意識はありましたが、実際どういう状態なのかは病院での診察を受けてからになります』

バイクとトラックって。

意識はあったけど、どういう状態かは診察を受けてから。

警察の声がぼんやりと頭の中にこだましている。

スマホを切り、バッグにしまうと椅子から立ち上がり、よろける足で玄関に向かった。

「ちょっと、智?何があったの?」

母が私の肩を掴み呼び止める。