なんで、世の中は平等にならないんだろう......
なんで、私はあの子になれないんだろう......
みんなに愛されるあの子みたいに......

朝起きると家には誰もいなくて、音もない。今に始まったことじゃないように、三雲 翼は平然と支度を始める。
慣れた手つきで卵を割ると、フライパンに油を注ぎ火にかける。蓋をして少し待つと香ばしい匂いが漂ってくる。朝食を取り家出ると、玄関には、藤野 遥都が待っていた。
と、彼は一言
「遅い」
「あんたには関係ないでしょ?」
いつものように返すと、2人で家を出た。
遥都は翼にとっての唯一の幼なじみで小中一緒だった。高校に入り離れられるかと思ったが、高校も一緒でもう諦めた。
「ねぇ、翼」
「何?」
「最近どう?」
「普通」
適当に返すと、呆れずまた聞いてきた。
「家は?」
「どうでもいいでしょ」
これだけは、少しきつい言い方になってしまったと後悔したが、当の本人は、大して何も感じてなさそうだったので、気にするのをやめた。

家から、電車と少し歩いてるついたここは、私たちの通う「聡明高校」。偏差値は、県内トップレベルでもある、69。しかし、根暗な訳ではなく、個性を尊重しているのが、ここの魅力とも言えるだろう。
昇降口に入ると、数十人の生徒が駆け寄ってくる。
「翼様ー!!」
「今日もお美しいです!!」
など、彼女を取り囲む声に彼女自身、うんざりしていた。隣にいた遥都は、くすくす笑っていた。気になった翼は、
「どうしたの?」
と、声をかけた。そしたら、
「だって翼相変わらず女子からも男子からもモテるんだもん。羨ましいよ。」
そう言われて、少しびっくりした。こんなに猫撫で声で声をかけられることの何が嬉しいのか彼女には、分からなかったのだ。
「じゃ、また放課後」
遥都は、そう言って教室に言ってしまった。
翼は、それに対して返事を返すこともなく彼女もまた、教室に入っていった。