「桃さん、出れる?」
「ええ」

お兄ちゃんも帰って行った午後6時の社長室。
すでにデスクの片付けも終わった私は鞄を持って戸締りを確認していた。
もちろん自分から喜んで優也さんについて行こうとは思わないが、秘密をばらされるかもと思うと強く拒むことはできなかった。


「すみません、お先に失礼します」

定時に仕事を終わらせたため、秘書室にはまだみんな残っていた。

「「お疲れさまでした」」

みんなが返事をしてくれて、ちょうど隼人とも目が合ったが、何も言われることは無かった。

「じゃあ、行こう」
「うん」

どうやら優也さんが店を予約してくれたらしい。
着いてからのお楽しみですよって言っているけれど、きっとどこかの高級レストランなのだろうな。