その後、私と優也さんを交互に見た隼人は何か言いたそうに社長室を出て行った。
もし優也さんがいなければ文句の一つも言いたかったのかもしれないけれど、結局何も言わなかった。

「課長は桃さんの事情を知っているの?」
「ええ、知っているわ」

お兄ちゃんの友人である隼人は、初めから知っていた。

「親しいんだね」
「まあ、4年も一緒に働いてきたから」

ククク。
なぜだろう、優也さんが笑っている。

「何?」
私、何か笑われるようなこと言ったかしら。

「いや、何でもないよ」

優也さんの反応に含みは感じたものの、私は追及することを辞めた。
これ以上何か言えば、自分がぼろを出しそうで怖かったからだ。

「僕としては桃さんと食事に行ければいいんだ。今夜は楽しみにしているね」
「う、うん」

困ったなと思いながら、私は返事をしてしまった。