トントン。
社長秘書室のドアがノックされた。

「はい」
反射的に返事をすると、現れたのは隼人だった。

「お疲れ様です」
「お疲れさま。今日の社長のスケジュールだが、できるだけ午後には何もいれないでくれ。もちろん今はオフにしてあるが、突然面会希望とか入ってくるかもしれないから気を付けておいてくれ」
「承知しました」

忙しいお兄ちゃんのことだから、予定が予定でなくなることも多い。
隼人はそのことを気にしているようだ。

「それから、高井さんも今日は早く上がって」

優也さんがいるせいか隼人もはっきりとは言わないが、今日が一条の両親の命日だから気遣ってくれているようだ。

「私は」
いいですからと言おうとしたのに、横から優也さんが入って来た。
「桃さんは今夜僕と食事に行くので、一緒に帰ります」

優也さんその発言は・・・
さすがにマズイと思ったが、遅かった。

「ふーん」
凄く冷たい目をした隼人に、私は睨まれた。