「個人的なことってどういうことよ」

私の前ではわりと毒舌な隼人だけれど、人当たりはソフトで外面はいいし、見た目だって悪くない。
どこかのご令嬢に気にいられて縁談の話でもあったのかなと、まず想像した。
でも待てよ、そんな話があれば川村唯が黙っていない気がする。
ってことは、川村物産からの縁談?
それなら私にも話してくれるはずで・・・

「何かトラブルでもあったの?」
わざとらしく、仕事のことかと聞いてみる。

「いいえ違います」
「じゃあ・・・」
何なのよと、私は睨んでしまった。

「これは秘密なんですけれど、課長うちを辞めるつもりらしいです」
「はああ?」
今度こそ絶叫した。

「ちょっと高井さん声が大きいですって」
「だって・・・」
これが叫ばずにいられますか。
隼人がうちを辞めるなんて私は何も聞いていないし、何でそのことを川村唯が知っているのよ。

「私だって今日聞いたばかりで驚いているんです」

隼人に猛アプローチをかけていた川村唯の悔しそうな表情を見て、どうやら本当なんだと感じた。

「誰にも言わないでくださいよ。まだ私と会長と社長しか知らないんですから」
「ええ」
言わないわ。でも、お兄ちゃんには確認するつもり。