祭りの時の約束、どこかに出かける日が来た。
つまり、初めてのお出かけというデートだ。
錬磨は、夏希からいじめられないようにかたくなに友達という位置を守ってくれていた。
でも、気づくとしょっちゅう放課後は一緒に過ごしていた。
言葉にしないけれど、両思いなのかな、とは感じていた。
さりげない優しさ、恋愛感情を感じるときがあったから。
でも、まだ恋人じゃない距離。
「今日は、初デートだね」
錬磨君は相変わらずTシャツにジーパンという格好で、特におしゃれをしているわけではないけれど、顔立ちがとても整っていて、無造作な髪型と長めの前髪が彼の魅力をますます引き出しているような気がした。
「まぁ、そんなところかな」
否定をしないなんて、珍しいな。
「私は大大大好きだよ!!」
ずっと思っていたことを言えた。昨日何回も練習した一言を会ってはじめて言うことができた。
胸のつかえがとれた。まるで、小骨がのどに刺さってずっと気になっていた後に、取れた時の爽快感に似ていた。
別に片思いでもいい。彼から好きだと言われなくてもいい。私の気持ちが届けばそれでいい。
以前は相手が私を好きでもないのに、一方的に愛情を注ぐことに抵抗があった。
小さなプライドかもしれない。
愛されないのに、自分だけ愛するなんて、損している気がしていた。
でも、今は損得なんて考えないようにしたいと思うようになった。
「俺も、愛花が大好きだ」
今、私のことを好きだと言ってくれた?
待ち合わせ場所にたたずみながら、私たちは道行く人を見つめながら、告白の確認をした。
「今まで、ずっと付き合うっていうことは避けようと思ってたけど、これってもう付き合ってるよな? 毎日放課後は一緒に過ごして、休日も一緒に出掛けてさ」
「そうなの?」
「俺、ちゃんとおまえと付き合いたいから、付き合おう」
視線が重なる。まっすぐな視線。かっこいいと思わず見とれる。私みたいな特に美人でも何でもない普通の女子でいいのかな。
「私なんかでいいの?」
確認を取る。
「俺がおまえがいいっていってるんだよ。文句あるか?」
やっぱり不良だけあって、ちょっとしたセリフがケンカみたい。でも、それはすごくすごく甘い甘い言葉で、私は素直に受け取ることにした。
「文句なんてありません。よろしくおねがいします」
お辞儀をする。すると、くしゃっと髪の毛を撫でられた。
「俺、愛花の髪の毛が好きなんだ。サラサラしていて、風になびくとすごくいい匂いがする。とにかくかわいい」
「……ありがとう」
それ以上は言葉にならなかった。
そのまま錬磨君は私のおでこに顎を当てた。
「すげー幸せ」
「……私も」
今日は錬磨君がやたら素直に愛を囁く。こんなことがあっていいのだろうか? もしかしたら、こんなにいいことがあったら、明日死んでしまうかもしれない。でも、ずっとこうやって二人で過ごしたいな。
「今日はお目当てのパフェを食べに行くぞ。ポイントも入ったから俺のおごりだ」
「ありがとう」
彼は生い立ちが決して幸福じゃないのにいつも幸福な素振りをする。悲しい顔を見せない。きっとそんなところが大好きになったのかもしれない。
商店街を歩いているとあの神社の神主が買い物に来ていた。
ごく普通の人間だ。
「君、強いね。君の神技には感服だよ」
「あんた、何者だ? やっぱり、この町の監視役なのか?」
「ただの神主だよ。もしかして、私の先祖に鬼神がいたのかもしれない程度だ。野生の鬼神がこの町で悪さしないように見守ることも私の仕事だよ。そして、共存するために彼らを見守り続けることも私の仕事だよ、鬼神斬りの百戦錬磨君」
「どうして俺の名前を?」
「それくらいわかってますよ。この町を見守る側だからね」
「神主は鬼神なのか?」
錬磨君が問いかけた。
「だったら何だというんだ? 人間を喰らわずとも生きられるように進化していることに誰も気づかない。つまり、全部鬼神のせいにしてこの世界は回ろうとしているんだと思っているよ。都合の悪いことは鬼神のせい。一部の野生は少数だがたしかに現存していて、人間を襲うこともある。しかし、知能が低く長生きは難しい。人間ポイントカードなんて国の都合じゃないか。生贄や鬼神とは関係はない」
思いのほか神主は冷静に否定をした。そして、結構重要で大切な話をした。
神主はこの町を監視している鬼神との共存のためにいる存在だということを伝えてきたようだった。彼には鬼神の血が流れているのかもしれない。でも、人間を食べなくても生きていけるくらい血は薄くなったのかもしれない。進化しているとはどの書物にも書いていなかった。野生の鬼神がどの程度いるのかはわからない。
「私たちになんでこんなこと教えたんですか?」
「鬼神斬りの情報は国からいただいているんだ。そして、その人の家庭の事情や仕事を頼まれることになった経緯を知ってしまう。百戦錬磨君の家庭は実に大変なようだね。頼まれれば、鬼神を派遣しても構わないが、失踪したという実の父はきっとどこかで生きているよ。義理の父も同様だ。何も出てこないというのは事件や事故じゃなく本人の意志のことが多いんだ。だから、身分を隠してしまう」
今日は特別な一日となった。人生初の両思い。恋人手つなぎ。
大切な人と想いが通じた喜び。
私、一番幸せかもしれない。
「若葉高校受けようか。公立だし、私たちの学力ならば上位で入ることができる。そして、5本指に入る進学校」
「それ、いいかも。俺は、おまえのことが大好きだと気づいたよ。もう、自分をごまかせない。桜葉は受験勉強で恋愛どころじゃないって感じだけどな」
「私は、一人でも強く生きている錬磨君に魅力を感じているよ。どんな逆境があっても、絶対にあきらめない精神を持っているよね。精神力が半端ないし、優しいし」
「それって大好きっていうことか?」
真顔で聞かれると正直照れる。
「うん」
笑顔で答える。
「今日も洗濯と晩御飯の準備だな」
主婦業もしっかり行う彼は素敵だ。最初抱いていたレッドリストである不良のイメージはいまや吹っ飛んだ。彼はその辺の中学生よりずっとしっかりしている。
「家事もして、勉強もしているなんてすごいよ」
「これからもさ、文字でやり取りは続けたい」
「そうだね。好きっていうのも文字のほうが照れないし」
「手紙って形に残るから、いい宝物になるな」
隠し事は辞めようと満を持して告白する。
「実は……私、殺すであろう人がわかるんだ。ずっと錬磨君から黒いモヤが見えていて気になっていたの」
「なるほど。特殊能力はそーいうことか。ちなみに俺は、人間は殺さないよ。人間の害になる野生の鬼神しか殺さないから、心配するな」
私たちはペンを持って今日も戦い、愛を囁く。
時に彼は鬼神をナイフで斬り、ボランティア活動でポイントを稼ぐ。
私たちは二人共大幅に成績が伸びたので、成績上昇ポイントを獲得した。
高校の入学金や学用品を買うのに困らないくらいは貯金している。
「お金ってないと不安だけど、私たちにはポイントカードがある」
「便利な時代になったもんだな。表向きでもいいことをしていればポイントが振り込まれるからな。好きな人にプレゼントを買うこともできるしな」
さりげなく優しい。レッドカードを出されるタイプだという偏見を持っていた自分が恥ずかしい。ポイントを換金して最近髪を切った彼はさっぱりしていてより一層さわやかになった。鋭いと思っていた瞳もよく見ると丸くてかわいい形だったりする。雰囲気で決めつけていただけなのかもしれない。
貧しいながら、錬磨のお母さんは新しい仕事を見つけて働き始めたらしい。
どの程度続くのかもわからないけれど、大事な一歩を踏み出してくれたと笑顔を見せた。私の父親も再就職先が決まり、仕事に慣れるので精いっぱいだ。母親もパートを始めた。みんな働くことでポイントが貯まり、社会貢献しているという評価を与えられた。
私たちは冬のクリスマスもバレンタインも一緒に過ごしたけれど、同じ目標に向かっているだけで充実した毎日を送っていた。
来年度、桜が咲く時期に、私たちは手をつないで一緒に桜並木を通ることになると信じて冬を乗り切る。
確実に点数が取れる基本問題を徹底的にこなした。教科書は舐めるように読んで、暗記をした。
高校に入るために、将来の自分のために今できる精一杯のことをやるしかない。
合格通知を手にするまで、絶対とは言えないけれど、確実に入ることができそうな高校の上位合格を目標にしている。
一緒に勉強して、挫けそうなときは励まし合う。素晴らしい仲間でもある。
桜の咲くころ、百戦錬磨と私が同じ道を歩いていますように――。
私はそのことだけをねがいながら合格通知を待った。
毎日となりに、錬磨がいる。
毎日不器用ながら優しさを見せてくれる。
「これで、一緒に高校に通うことができるな」
合格発表の日、彼はにこやかに声をかけてくれた。そして、やったな!!
と抱きしめられた。
「これからも、こんな私をよろしくね」
「俺は、どんな愛花でも受け入れるよ。人間ポイントが低くても俺が愛したことに違いはない。どんな他の人間よりもおまえは魅力があるって思ってるからな」
「意外と優しいこと言ってくれるんだね」
私の方が照れる。
「でも、これ一回きりだから、今後は期待するなよ」
「えー、何回でも聞きたいよー」
こんなやりとりを毎日している。周囲から見たらラブラブな最中にいる恋人同士になった。
人生はわからない。こんなに人を好きになることがあるなんて。
最初は全然好きじゃなかったのに、彼のことを知れば知るほどどんどん好きになった。
昨日よりも今日のほうが大好き。
人間ポイントが高いから幸せとか不幸せとかそういうのは関係ないのかもしれない。お金持ちかそうじゃないかで幸せ度が測れないという形にとても似ている。個人の感想だから、そんなこと誰にもわからない。言ったもの勝ちだ。
錬磨と一緒に合格して、高校に通っている。
いつも私を第一に考えてくれる。
高校では新しい女友達ができて、クラスに馴染めている。
結果的に優秀高校に行かなくて正解だったと思う。
学力も校風も自分に合う高校を選んでよかった。
正解という理論自体ここでは無意味なのかもしれない。
今日も彼氏に手紙を書く。
愛を形にして毎日囁く。
彼はうざいと思わずいつも受け止めてくれる。
『あなたのことが大好きな私はとっても幸せです。』
つまり、初めてのお出かけというデートだ。
錬磨は、夏希からいじめられないようにかたくなに友達という位置を守ってくれていた。
でも、気づくとしょっちゅう放課後は一緒に過ごしていた。
言葉にしないけれど、両思いなのかな、とは感じていた。
さりげない優しさ、恋愛感情を感じるときがあったから。
でも、まだ恋人じゃない距離。
「今日は、初デートだね」
錬磨君は相変わらずTシャツにジーパンという格好で、特におしゃれをしているわけではないけれど、顔立ちがとても整っていて、無造作な髪型と長めの前髪が彼の魅力をますます引き出しているような気がした。
「まぁ、そんなところかな」
否定をしないなんて、珍しいな。
「私は大大大好きだよ!!」
ずっと思っていたことを言えた。昨日何回も練習した一言を会ってはじめて言うことができた。
胸のつかえがとれた。まるで、小骨がのどに刺さってずっと気になっていた後に、取れた時の爽快感に似ていた。
別に片思いでもいい。彼から好きだと言われなくてもいい。私の気持ちが届けばそれでいい。
以前は相手が私を好きでもないのに、一方的に愛情を注ぐことに抵抗があった。
小さなプライドかもしれない。
愛されないのに、自分だけ愛するなんて、損している気がしていた。
でも、今は損得なんて考えないようにしたいと思うようになった。
「俺も、愛花が大好きだ」
今、私のことを好きだと言ってくれた?
待ち合わせ場所にたたずみながら、私たちは道行く人を見つめながら、告白の確認をした。
「今まで、ずっと付き合うっていうことは避けようと思ってたけど、これってもう付き合ってるよな? 毎日放課後は一緒に過ごして、休日も一緒に出掛けてさ」
「そうなの?」
「俺、ちゃんとおまえと付き合いたいから、付き合おう」
視線が重なる。まっすぐな視線。かっこいいと思わず見とれる。私みたいな特に美人でも何でもない普通の女子でいいのかな。
「私なんかでいいの?」
確認を取る。
「俺がおまえがいいっていってるんだよ。文句あるか?」
やっぱり不良だけあって、ちょっとしたセリフがケンカみたい。でも、それはすごくすごく甘い甘い言葉で、私は素直に受け取ることにした。
「文句なんてありません。よろしくおねがいします」
お辞儀をする。すると、くしゃっと髪の毛を撫でられた。
「俺、愛花の髪の毛が好きなんだ。サラサラしていて、風になびくとすごくいい匂いがする。とにかくかわいい」
「……ありがとう」
それ以上は言葉にならなかった。
そのまま錬磨君は私のおでこに顎を当てた。
「すげー幸せ」
「……私も」
今日は錬磨君がやたら素直に愛を囁く。こんなことがあっていいのだろうか? もしかしたら、こんなにいいことがあったら、明日死んでしまうかもしれない。でも、ずっとこうやって二人で過ごしたいな。
「今日はお目当てのパフェを食べに行くぞ。ポイントも入ったから俺のおごりだ」
「ありがとう」
彼は生い立ちが決して幸福じゃないのにいつも幸福な素振りをする。悲しい顔を見せない。きっとそんなところが大好きになったのかもしれない。
商店街を歩いているとあの神社の神主が買い物に来ていた。
ごく普通の人間だ。
「君、強いね。君の神技には感服だよ」
「あんた、何者だ? やっぱり、この町の監視役なのか?」
「ただの神主だよ。もしかして、私の先祖に鬼神がいたのかもしれない程度だ。野生の鬼神がこの町で悪さしないように見守ることも私の仕事だよ。そして、共存するために彼らを見守り続けることも私の仕事だよ、鬼神斬りの百戦錬磨君」
「どうして俺の名前を?」
「それくらいわかってますよ。この町を見守る側だからね」
「神主は鬼神なのか?」
錬磨君が問いかけた。
「だったら何だというんだ? 人間を喰らわずとも生きられるように進化していることに誰も気づかない。つまり、全部鬼神のせいにしてこの世界は回ろうとしているんだと思っているよ。都合の悪いことは鬼神のせい。一部の野生は少数だがたしかに現存していて、人間を襲うこともある。しかし、知能が低く長生きは難しい。人間ポイントカードなんて国の都合じゃないか。生贄や鬼神とは関係はない」
思いのほか神主は冷静に否定をした。そして、結構重要で大切な話をした。
神主はこの町を監視している鬼神との共存のためにいる存在だということを伝えてきたようだった。彼には鬼神の血が流れているのかもしれない。でも、人間を食べなくても生きていけるくらい血は薄くなったのかもしれない。進化しているとはどの書物にも書いていなかった。野生の鬼神がどの程度いるのかはわからない。
「私たちになんでこんなこと教えたんですか?」
「鬼神斬りの情報は国からいただいているんだ。そして、その人の家庭の事情や仕事を頼まれることになった経緯を知ってしまう。百戦錬磨君の家庭は実に大変なようだね。頼まれれば、鬼神を派遣しても構わないが、失踪したという実の父はきっとどこかで生きているよ。義理の父も同様だ。何も出てこないというのは事件や事故じゃなく本人の意志のことが多いんだ。だから、身分を隠してしまう」
今日は特別な一日となった。人生初の両思い。恋人手つなぎ。
大切な人と想いが通じた喜び。
私、一番幸せかもしれない。
「若葉高校受けようか。公立だし、私たちの学力ならば上位で入ることができる。そして、5本指に入る進学校」
「それ、いいかも。俺は、おまえのことが大好きだと気づいたよ。もう、自分をごまかせない。桜葉は受験勉強で恋愛どころじゃないって感じだけどな」
「私は、一人でも強く生きている錬磨君に魅力を感じているよ。どんな逆境があっても、絶対にあきらめない精神を持っているよね。精神力が半端ないし、優しいし」
「それって大好きっていうことか?」
真顔で聞かれると正直照れる。
「うん」
笑顔で答える。
「今日も洗濯と晩御飯の準備だな」
主婦業もしっかり行う彼は素敵だ。最初抱いていたレッドリストである不良のイメージはいまや吹っ飛んだ。彼はその辺の中学生よりずっとしっかりしている。
「家事もして、勉強もしているなんてすごいよ」
「これからもさ、文字でやり取りは続けたい」
「そうだね。好きっていうのも文字のほうが照れないし」
「手紙って形に残るから、いい宝物になるな」
隠し事は辞めようと満を持して告白する。
「実は……私、殺すであろう人がわかるんだ。ずっと錬磨君から黒いモヤが見えていて気になっていたの」
「なるほど。特殊能力はそーいうことか。ちなみに俺は、人間は殺さないよ。人間の害になる野生の鬼神しか殺さないから、心配するな」
私たちはペンを持って今日も戦い、愛を囁く。
時に彼は鬼神をナイフで斬り、ボランティア活動でポイントを稼ぐ。
私たちは二人共大幅に成績が伸びたので、成績上昇ポイントを獲得した。
高校の入学金や学用品を買うのに困らないくらいは貯金している。
「お金ってないと不安だけど、私たちにはポイントカードがある」
「便利な時代になったもんだな。表向きでもいいことをしていればポイントが振り込まれるからな。好きな人にプレゼントを買うこともできるしな」
さりげなく優しい。レッドカードを出されるタイプだという偏見を持っていた自分が恥ずかしい。ポイントを換金して最近髪を切った彼はさっぱりしていてより一層さわやかになった。鋭いと思っていた瞳もよく見ると丸くてかわいい形だったりする。雰囲気で決めつけていただけなのかもしれない。
貧しいながら、錬磨のお母さんは新しい仕事を見つけて働き始めたらしい。
どの程度続くのかもわからないけれど、大事な一歩を踏み出してくれたと笑顔を見せた。私の父親も再就職先が決まり、仕事に慣れるので精いっぱいだ。母親もパートを始めた。みんな働くことでポイントが貯まり、社会貢献しているという評価を与えられた。
私たちは冬のクリスマスもバレンタインも一緒に過ごしたけれど、同じ目標に向かっているだけで充実した毎日を送っていた。
来年度、桜が咲く時期に、私たちは手をつないで一緒に桜並木を通ることになると信じて冬を乗り切る。
確実に点数が取れる基本問題を徹底的にこなした。教科書は舐めるように読んで、暗記をした。
高校に入るために、将来の自分のために今できる精一杯のことをやるしかない。
合格通知を手にするまで、絶対とは言えないけれど、確実に入ることができそうな高校の上位合格を目標にしている。
一緒に勉強して、挫けそうなときは励まし合う。素晴らしい仲間でもある。
桜の咲くころ、百戦錬磨と私が同じ道を歩いていますように――。
私はそのことだけをねがいながら合格通知を待った。
毎日となりに、錬磨がいる。
毎日不器用ながら優しさを見せてくれる。
「これで、一緒に高校に通うことができるな」
合格発表の日、彼はにこやかに声をかけてくれた。そして、やったな!!
と抱きしめられた。
「これからも、こんな私をよろしくね」
「俺は、どんな愛花でも受け入れるよ。人間ポイントが低くても俺が愛したことに違いはない。どんな他の人間よりもおまえは魅力があるって思ってるからな」
「意外と優しいこと言ってくれるんだね」
私の方が照れる。
「でも、これ一回きりだから、今後は期待するなよ」
「えー、何回でも聞きたいよー」
こんなやりとりを毎日している。周囲から見たらラブラブな最中にいる恋人同士になった。
人生はわからない。こんなに人を好きになることがあるなんて。
最初は全然好きじゃなかったのに、彼のことを知れば知るほどどんどん好きになった。
昨日よりも今日のほうが大好き。
人間ポイントが高いから幸せとか不幸せとかそういうのは関係ないのかもしれない。お金持ちかそうじゃないかで幸せ度が測れないという形にとても似ている。個人の感想だから、そんなこと誰にもわからない。言ったもの勝ちだ。
錬磨と一緒に合格して、高校に通っている。
いつも私を第一に考えてくれる。
高校では新しい女友達ができて、クラスに馴染めている。
結果的に優秀高校に行かなくて正解だったと思う。
学力も校風も自分に合う高校を選んでよかった。
正解という理論自体ここでは無意味なのかもしれない。
今日も彼氏に手紙を書く。
愛を形にして毎日囁く。
彼はうざいと思わずいつも受け止めてくれる。
『あなたのことが大好きな私はとっても幸せです。』