「朱里さん!!」

車から降りるなり、聖美が涙目で朱里に駆け寄り抱きついた。

「聖美さん、こんにちは」
「朱里さん!お身体は?お怪我はもう大丈夫なのですか?」
「ええ!もうすっかり元気よ。聖美さんは?気分は落ち着いた?」
「そんな、私のことなんて…。朱里さんは私をかばって怪我をされたのに」
「だからもう平気だって。ね?ピンピンしてるでしょ?」

朱里は笑いながら聖美の顔を覗き込んだ。

あの日から1週間が経ち、朱里は瑛と一緒に菊川の車で聖美の屋敷を訪れていた。

みぞおちの青あざは少し残っているものの、身体は回復し、痛むこともなかった。

とにかく朱里に謝りたいと何度も聖美や両親が連絡をくれ、瑛は無理しなくてもと言ったが、朱里はこの日の再訪を決めた。

聖美の屋敷は警備を強化し、門の前にも警備員が二人立っている。

リビングに入ると、聖美の両親が朱里に頭を下げた。

「朱里さん。この度はうちの敷地内にも関わらずこのような怪我を負わせてしまい、本当に申し訳ありませんでした。そして娘を守ってくださって、本当にありがとう」

初めて会う聖美の父は、厳しい表情で朱里に詫びる。

「いえ、あの。どうかお気になさらず。それより聖美さんがご無事で何よりでした。私はお嬢様でも何でもないので、多少の怪我なんてどうってことありませんから」

手をパタパタ横に振りながら笑ってみせると、聖美の母が、まあと目を潤ませる。

「とんでもないわ。こんな素敵なお嬢さんに怪我をさせてしまうなんて、本当にごめんなさい。瑛さんも。大切なご友人をこんな目に遭わせてしまって、申し訳ありませんでした」
「いえ、そんな」

瑛も恐縮して首を振る。

「朱里さんのご両親や瑛さんのお父上にも、改めて直接謝罪に伺います」

そう言う聖美の父に、朱里はひえっと仰け反る。

(な、なんか、私のせいで大変なことに?)

「あの、本当に私のことはお気になさらず。両親も遠くにいますし。それより今日は聖美さんと楽しくお話したいと思って伺いました。聖美さんに少しでもお元気になってもらえたらと」

まあ、朱里さん…と、聖美はまた目を潤ませる。

「ほら、そんなに泣かないで。ね?」
「ええ、ありがとうございます。朱里さん、今日は朱里さんの大好きなアフターヌーンティーをご用意しているの。どうぞ召し上がってくださいね」
「わー、楽しみ!」
「ふふ、せっかくですからガーデンで食べませんか?」
「ええ、是非!」

ようやく聖美は朱里に笑顔をみせて頷いた。