しばらくして、瑛の母や菊川、千代が様子を見に来てくれた。

心配する皆に、朱里は大丈夫ですと笑ってみせる。

千代が用意してくれた夕食をぺろっと平らげると、ようやく皆は少し安心したようだった。

「でも朱里ちゃん。しばらくはうちで安静にしてね」
「ええ?おば様そんな。大丈夫ですよ、私」
「いいえ、だめよ!お医者様にも、安静にするように言われたの。それに主人も話を聞いてとても心配してね。朱里ちゃんのそばに必ず誰かついているようにと言われてるのよ」

そうですか、すみませんと朱里は小さく謝る。

「朱里さん。このようなことになったのは私にも責任があります。あなたのお帰りを都築家に任せたりせず、私がきちんとお迎えに上がるべきでした。本当に申し訳ありません」

菊川が深々と頭を下げる。

「いいえ!菊川さんは何も悪くありません。もちろん都築家の皆様だって。私は本当に大丈夫ですから、どうかこれ以上心配しないでくださいね」
「朱里さん…。ありがとうございます。せめてもの罪滅ぼしに、朱里さんが回復されるまでは私がつきっきりで看病致します。隣の和室に寝泊まりしますので、真夜中でもすぐに叩き起してくださいね」

えっ!と朱里は驚く。

「き、菊川さん。隣の部屋に寝るの?」
「はい。いつでもお声かけください」

嘘でしょ?と思いつつ、瑛の母や千代を見るも、二人とも真剣に頷いている。

(え、ちょっと待って。寝言とか聞かれたらどうしよう。イビキは?私って、イビキかく?どうだろう…)

一人で考え込んでいると、千代が心配そうに顔を覗き込んできた。

「まあ、朱里お嬢様。お元気がなくなりましたわ。どこか痛みますか?」

ええ?!と、菊川や母も覗き込んでくる。

「だ、大丈夫よ!なんともないです!あはは!」

(はあー、やだわー、菊川さんが隣で寝るなんて)

そう思いつつ、朱里はやたらと明るく笑ってみせた。