もう一度だけでいいから…




そう思っても願っても俺は何も出来ずに俯くだけだった
俺は無力だ…




「お姉ちゃん!!!ありがとぉ。」




すると,さっきまで静かだった芽衣の声が後ろから聞こえてきた




その声に首を横に振る柚綺サン…
その姿を最後に柚綺サンは秦と行ってしまった。




俺のズボンをガタガタと震えた手で握りながら立つ芽衣




芽衣…,怖いの…?




俺は少しだけ後ろを向き芽衣の顔を見た




いつもなら泣き出してしまうような顔
でも,必死に堪えているように見えた




芽衣…
お前は強いよ─…




俺は何も出来ない無力者だけど,お前は俺とは違う…。




俺はさっきよりも強く手を握り,芽衣を見た




赤い浴衣にりんご飴…



そのりんご飴を頬張る姿……
まるで安梨だよ…



そんな俺等を月だけが見つめていた。