全然変わっていない団扇の柄…




イラストも花火も屋台だって,何にも─…




結局変わったのは…俺だけかよ。




俺は情けなくなりながらも立ち上がり屋台の方に向かってとぼとぼ歩いていった




近くまで来ると余計リアルに見える凄い人の量と光の量…




俺はちょっと引き気味になりながらもその中に一歩足を踏み出した




あたる肩と体…
誰かも知らない奴の肩や鞄が容赦なく俺の体にぶつかってきた




まじうぜぇ─…





俺は髪の毛をくしゃと掻いて一瞬立ち止まった




「はぁ─…帰りてぇ─……」




でも,そんな俺の弱弱しい言葉も虚しくこの人混みでかき消されていった




仕方がなく蜜希を探すために俺はまたとぼとぼと歩きだした




すると,俺の前から明らかに列を逆走してくる浴衣姿の女の子が見えた




下を向きながら必死で走っているその子は前を見ずに俺の方に走ってくる




ちょっと待て……。
このまま来たらぶつかるって……?