「そういう可能性がある、というお話です」

 先生は最後まで断定を避けたが、それが逆に信憑性と誠実さを感じられた。

「義母や義娘が濃すぎて存在が薄く感じていたが、重要人物は父親だったのか。父親について大至急調べろ」

 俺の言葉に、すぐに高城が「はい」と返事をした。

「先生、最後に一ついいですか?」

「なんでしょう」

「捺美は、親の呪縛から逃れることはできるのですか?」

 俺は先生の目を真っ直ぐに見つめて言った。

すると先生は少し考え込んでから、慎重に口を開いた。

「子どもの頃に受けた心の傷は、本人や周りが想像しているよりも深く長く人生に影響を与え続けます。

結婚をして幸せな家庭を築こうと前向きに歩き始めても、結局過去の傷から人間関係が上手く築けなくなり離婚してしまう人はとても多いです。でも……」

 先生は顔を上げて、俺の顔を見つめた。