後部座席を開けると、大空は許可も得ずにスーツケースをドカっと乗せた。


「大空、お帰り!」

「うん、ただいま」

「この子が例の彼女さん?」

「そうだよ。 井筒星七さん」


「え、かわいい彼女さんね」と福井弁でそう言ったお姉さんは、大空によく似ている。 初めて彼氏の家族に会うとなり、心臓がドキドキと高速で波打ち始める。

そんな私をよそに、大空は後部座席に腰かける。 「こっち」と手招きされ、恐る恐る車に乗り込んだ。
私たちがシートベルトを締めたのを確認すると、お姉さんは車を発進させた。

ルームミラー越しにお姉さんと目が合い、話しかけてくれる。


「星七ちゃん初めまして。 大空の姉の千秋(ちあき)です」

「あっ……井筒星七です。 いきなりお邪魔することになってすみません」

「なに言ってるの! そんなの気にしないで。 父も母も星七ちゃんに会えるの楽しみにしてて、昨日からうるさいよ。 大空が彼女連れて来るなんて初めてだから」


千秋さんは、にこにこ笑いながらそう言ってくれる。

実家に到着する前に、その言葉が聞けて少しだけ安心した。 大空が一緒だとは言え、どんな反応をされるかずっと不安だった。

私でいいのかな……とか、大空とのお付き合いを認めてもらえるかな……とか、そんなことが頭をずっとぐるぐるしていた。