僕は森に入って行った。
 「うわ」
 大木に人の顔みたいなものがたくさん浮き出ていた。
 まるで、木に人が吸い込まれたようだ。
 「なんだ、これは」
 不気味だ。
 僕はまじまじと見つめた。僕は森を進んだ。
 ばさっ。
 なんだ。
 大きい蝙蝠だ。吸血蝙蝠だろうか。
 僕は進んだ。すると、すごいうなり声が聞こえた。犬か狼のようだ。僕は胸が高鳴った。
 叢の中から、巨大な白いけむくじゃらな犬が現れた。
 「何をしにきたんだ」
 と、犬がしゃべった。しゃべるんだ。
 「ぼ、僕は君に会いに来たんだ」
 「僕に?」
 「そうだ」
 「何の用だ」
 「君に会いたかったんだ」
 「僕に?」
 「うん」
 「君の名前は」
 「そうだった。名乗りもせず、申し訳ない。僕の名は橋本だ」
 「橋本か」
 「君の名は」
 「僕の名はモカだ」
 「モカちゃんか」
 「そうだ」
 モカちゃんと言って、そうだ、ということは、やはり女の子か。
 「女の子?」
 「そうだ」
 やっぱり。
 「だったらなんだ」
 と、モカちゃんはきいた。
 「え」
 と、僕。
 「僕はただ、女の子なんだなあ、と思って」
 「ふうん」
 と、モカちゃん。