古風な和室で家族三人が向き合う。

拳を握りしめて正座する葉緩に宗芭が声をかける。


「葉緩、元気がないようだが」

「な、なんでもございません」


視線をさ迷わせ、最後は膝の上に落ちる。

宗芭は大きく息を吐き、葉緩を諭すことにした。



「忍たるもの、常に状況を見極めるのだ。冷静沈着。良いな?」

「……はい」

白い蛇がスルスルと葉緩の横にやってくる。

シャーッと葉緩にしか聞こえない声で呼んでいた。


「あ、では学校に行ってまいります」


煙幕を出し、その中から衣装を変えた葉緩が現れる。

くノ一から高校生に姿を変えた葉緩が白蛇と共に学校へと向かっていった。


「で、お前は学校に行かないのか?」


残った絢葉に目を向け、宗芭は困惑しながら声をかけた。

絢葉は目を細めてゆったりと微笑む。


「行っていますよ? ただ主様にまだ出会えておりませんので退屈ではあります」

「現代に溶け込むのもまた必要なこと。忍のあり方は多種多様ということを学べ」

「はい、父上」


足音もなく見かけだけは子どもらしい動きを見せる。

人への溶け込み方の奇妙さが絢葉にはあった。


「葉緩と絢葉は真逆だな。忍に我(が)はどれだけ必要なのか……」


宗芭にも答えの出せない忍びの在り方であった。