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年月が経ち、葉名と蒼依が15の歳になった時のことであった。
白い雪が積もった銀世界に、番の木が月明かりを受けて動き出す。
枝と枝が伸び、翌日には絡み合った枝が現れていた。
里の者たちが枝の行方を見に集まっていた。
「やっぱり! あなたと枝が結びついてるわ!」
「一年前から君の枝に伸びていたけど、ようやく実って嬉しいよ」
里に住む番に結びついた男女が抱きしめあう。
葉名は自身の枝を見上げ、ホッと息をつく。
(私の枝は誰の枝にも伸びていない)
枝が番と結びつくのは16の数がすべて満ちる1の月。
16になった時点で番となる者が年下だった場合はその者の枝の根に絡みつく。
その時点で16にならずとも相手がわかるのだが、葉名の枝はまだ誰とも絡み合っていない。
(つまり私が誰かと結ばれるとするならば、同じ年齢か年下か)
「今年も俺の枝は結びつかず、と」
「――っ! 蒼依くん……」
蒼依の枝を見ると、まだ誰の枝とも絡んでいなかった。
蒼依と葉名は同じ年齢のため、可能性がある。
その答えが出るのは一年後、16の年になった時だ。
「俺の番は葉名だったりして……」
蒼依の軽口に葉名は動揺し、顔を真っ赤に染め上げる。
つられて蒼依もまた赤くなっていた。
目をそらし、着物の袖で顔を隠す。
「な、なーんて……」
「……蒼依くんにはふさわしい相手が結ばれますよ。なんといってもこの里の長のご子息なのですから」
「葉名、俺は!!」
「蒼依様、こちらにおられたのですね」
「穂高(ほだか)……」
陽の光に照らされると稲穂色に輝く茶髪の女性が近づいてくる。
微笑を携えた垂れ目が蒼依をスッととらえる。
里の副長の娘であり、同じ歳の美しい女だった。