(きました、やってきました! 主様と姫のイチャイチャですっ!)



これぞ愛の勝利。

桐哉と柚姫の相思相愛は世界で一番尊い!



(これは進捗ありますかね!? あー、気になります! 行かねば!)


調子に乗った葉緩は二人のラブイチャを見逃しはしないと走り出す。

体育館を飛び出し、軽い足取りで追いかけようとしていた。



「はい、そこまで」

「ふぬぅ!? 望月くん!?」

「二人がちゃんと寄り添うのに邪魔しちゃダメだよ?」



葉緩を羽交い絞めし、葵斗はニコニコと笑う。

その腕の力に敵わない葉緩は悔しそうに手足をばたつかせる。



「ふぬぬ……これは私の人生の楽しみ」

「俺のことにも夢中になればいいよ」

「なにを……」


ひょいと身体を持ち上げられ、おろされたかと思うと壁に押し付けられていた。

やけに息遣いの感じる近さに葉緩は頬を紅潮させ、上目に葵斗を見る。



「……今は壁じゃないですよ?」

「知ってる」

「んんっ……!」


重なる唇に抵抗する気持ちは起きなかった。

焦がれるようにもっと欲しいとわがままになっていく。

全身が脈打つように熱く、息苦しくなった。

葵斗の伏せられた長いまつ毛を見て、葉緩の胸がキュッと締め付けられる。



(どうしてなんだろう。私、この人に触れられるとドキドキが止まらないのです)



そしてこうして唇を重ねることも、嫌ではなかった。

むしろそれが当たり前のように感じることが不思議であった。

指が絡まって、欲がどんどん溢れてくる。

そっと目を閉じ、葉緩は黙って葵斗を受け入れるのであった。