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教室に入ると柚姫がのほほんとした様子で微笑み、葉緩を迎える。



「葉緩ちゃん、おはよう。き、昨日はごめ……」

「姫ーっ! おはようございます!」

「わっ!?」



紅潮した顔を隠すように柚姫に飛びつき、ぐずりだす。

葵斗に“いたずらされたのだろう”と察した柚姫はクスクスと笑いながら葉緩の黒髪を撫でる。

うぐいすのような美声で葉緩をあやしていた。



「あのね、昨日はクッキー全部食べちゃったからこれお詫びに」



落ち着いて柚姫から離れた葉緩に、お詫びと言って紙袋を差し出す。

中を開くと一つずつラッピングされたカラフルなドーナツが入っていた。

柚姫は照れながらちらりと上目づかいに葉緩を見る。


「ドーナツ作ってみたの。た、食べてくれるかな?」

「もちろんであります! さすが姫! 女子力高い! かわいい! 好き! 最高でございます!」

「は、葉緩ちゃん。大げさだよ……恥ずかしい」

「ではさっそく一ついただき……」



中から一つ取り出し、大きく口を開けて食べようとする。

だが横から葵斗が割り込んできて、葉緩の食べようとしていたドーナツを一口パクっと食べてしまった。

あんぐりと口を開き、絶句する葉緩。



「……ごちそうさま」



ペロリと口端についたカスを舐めとり、席につく葵斗。

葉緩は欠けてしまったドーナツを見てショックを受けていた。