「バカもの!! あの秘薬を勝手に持ち出しただけでなく使用するとは!!」
「も、申し訳ございません~」
朝から大目玉を喰らい、宗芭に土下座して謝罪をする。
昨日の柚姫の暴走について報告をしたところ、宗芭の怒りに触れてしまったというわけだ。
柚姫の恋を応援しようと、葉緩は宗芭の蔵から勝手に秘薬を盗み出していたのだった。
呆れて息をつくと、ビクビクする葉緩を見る。
「それで、何ともないのか?」
「はぁ……? 特にはなにも……」
そこで葵斗に壁への擬態がばれてしまったことを思い出す。
唇が重なったことを思い出し、気まずくなって目をそらす。
「……なにも」
「そ、そうか。なら良い。そろそろ学校に行かねば間に合わんな。もういいから行きなさい」
「で、では本日も行ってまいります!」
一礼をし、装束を変えるとバタ足で部屋を飛び出していく。
朝から騒がしい娘だと呆れながら、宗芭はまだ畳の上で正座をしたままの絢葉に視線を移す。
「で、今日もお前は登校しないのか?」
「父上、時代は変わったのです。端末一つあれば勉強が出来るのですよ」
「ふ、ふむ。そうか。勉学に励むといい」
「はい、父上」
息子でありながらも淡々とした絢葉はよくわからない。
それ以上に時代の変化についていけず、宗芭は絢葉に言われて知るということが多くなっていた。
「ところで父上。あの薬はいったいどのようなものだったのですか?」
知識欲の大きい絢葉はそのまま居座り、宗芭に問う。
一度咳ばらいをし、絢葉の目を見ることなく宗芭は答えた。
「あれは忍向けの媚薬(びやく)だ」
「媚薬……」
まだ幼い絢葉には縁のないもののはずなのに、忍びとしてしっかり知識を持った絢葉は単語の意味を理解してしまう。
「忍以外のものにはただの興奮剤。ようは本音がダダ漏れになるだけだ」
つまり昨日の出来事はこの秘薬による影響であった。
秘薬入りのクッキーを口にした柚姫は興奮し、本音を抑えることが出来なくなった。
そして泣き出し、葉緩との友情に抱いていた不安を口にしていた。
一方、忍びの血を引く葉緩には違う効力を発揮する。
特定の匂いを嗅ぐと、酔ったようにふわついてしまうというものだ。
「番(つがい)がいる場合に効力を発揮するが、葉緩はまだ出会っていないようだから効き目はなかっただろう」
「なるほど、だから父上の秘蔵だったのですね」
むせるように咳き込み、眉間に皺をよせ絢葉を見る。
「も、もう良いだろう。 早く勉強してきなさい」
「はい、父上」
子どもらしくパタパタと音を立て、走り去る絢葉。その背を見て宗芭はどっと疲れてしまっていた。
「絢葉……恐ろしい子だ」
「も、申し訳ございません~」
朝から大目玉を喰らい、宗芭に土下座して謝罪をする。
昨日の柚姫の暴走について報告をしたところ、宗芭の怒りに触れてしまったというわけだ。
柚姫の恋を応援しようと、葉緩は宗芭の蔵から勝手に秘薬を盗み出していたのだった。
呆れて息をつくと、ビクビクする葉緩を見る。
「それで、何ともないのか?」
「はぁ……? 特にはなにも……」
そこで葵斗に壁への擬態がばれてしまったことを思い出す。
唇が重なったことを思い出し、気まずくなって目をそらす。
「……なにも」
「そ、そうか。なら良い。そろそろ学校に行かねば間に合わんな。もういいから行きなさい」
「で、では本日も行ってまいります!」
一礼をし、装束を変えるとバタ足で部屋を飛び出していく。
朝から騒がしい娘だと呆れながら、宗芭はまだ畳の上で正座をしたままの絢葉に視線を移す。
「で、今日もお前は登校しないのか?」
「父上、時代は変わったのです。端末一つあれば勉強が出来るのですよ」
「ふ、ふむ。そうか。勉学に励むといい」
「はい、父上」
息子でありながらも淡々とした絢葉はよくわからない。
それ以上に時代の変化についていけず、宗芭は絢葉に言われて知るということが多くなっていた。
「ところで父上。あの薬はいったいどのようなものだったのですか?」
知識欲の大きい絢葉はそのまま居座り、宗芭に問う。
一度咳ばらいをし、絢葉の目を見ることなく宗芭は答えた。
「あれは忍向けの媚薬(びやく)だ」
「媚薬……」
まだ幼い絢葉には縁のないもののはずなのに、忍びとしてしっかり知識を持った絢葉は単語の意味を理解してしまう。
「忍以外のものにはただの興奮剤。ようは本音がダダ漏れになるだけだ」
つまり昨日の出来事はこの秘薬による影響であった。
秘薬入りのクッキーを口にした柚姫は興奮し、本音を抑えることが出来なくなった。
そして泣き出し、葉緩との友情に抱いていた不安を口にしていた。
一方、忍びの血を引く葉緩には違う効力を発揮する。
特定の匂いを嗅ぐと、酔ったようにふわついてしまうというものだ。
「番(つがい)がいる場合に効力を発揮するが、葉緩はまだ出会っていないようだから効き目はなかっただろう」
「なるほど、だから父上の秘蔵だったのですね」
むせるように咳き込み、眉間に皺をよせ絢葉を見る。
「も、もう良いだろう。 早く勉強してきなさい」
「はい、父上」
子どもらしくパタパタと音を立て、走り去る絢葉。その背を見て宗芭はどっと疲れてしまっていた。
「絢葉……恐ろしい子だ」